2019年05月20日

パク・ヘイルがデビュー秘話、全州国際映画祭で「青春がテーマの詩を読み、演技を続けると決めた」

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 韓国・全羅北道全州市で5月2日から10日間「第20回全州国際映画祭2019」が開かれ、国内外の長短編275本が上映された。今年は韓国映画が作られ始めて100周年。これを記念して映画祭は「100年間の韓国映画」のセクションを設け、過去の映画を上映して監督や出演者をゲストに招いた。映画デビュー作「ワイキキ・ブラザーズ」(01)が上映されたパク・ヘイルはイム・スルレ監督とともに登壇し、撮影時のエピソードを明かした。

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デビュー作「ワイキキ・ブラザーズ」18年ぶり凱旋
 「100年間の韓国映画」セクションは1990年代以前の「20世紀」部門と2000年代以降の「21世紀」部門からなる。「21世紀」部門では2000年から2010年までに製作された14本が紹介された。その1本が、ナイトクラブでの演奏で生計を立てる中年バンドマンの悲哀を描いた「ワイキキ・ブラザーズ」(01)。第2回全州映画祭のオープニング作品で、今回は18年ぶりの「凱旋」となった。

 パク・ヘイルはこの作品でイ・オル演じる主人公ソンウの高校時代を演じた。イム監督によると、高校生のソンウ役のキャスティングに悩んでいた時、事務所のスタッフがソウルの演劇街・大学路の舞台に立つパクを“発掘”した。当時パクは23〜24歳。監督は「演劇ならともかく、カメラの前では年齢はごまかせないだろうと思った。しかし演技はうまいし、実際に会ってみると肌がとてもきれいだった(笑)」と起用の経緯を回想した。

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 パクは監督の話に照れ笑いしながら、「音楽が大好きだった高校時代を思い出し、バンドメンバー役の他の俳優と一緒に2カ月間スタジオにこもって練習した。この映画は今も常に(俳優としての自分の)土台になっている」と懐かしそうに振り返った。


「演劇を始めたけれど、お金にならない。やめようと思うこともあった」
 また、観客から若い頃の夢について尋ねられると「音楽が好きだったが才能がなかった。演劇を始めたけれど、まったくお金にならない。やめようと思うこともあった。ある時、青春をテーマにした詩を読んで、演技を続けることを決めた。それが今につながっている」と、悩み多き日々があったことを告白した。

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 イム監督が「理想と現実のギャップについて語ろうとした映画」と話すように、作品のテーマは社会のレールから外れたアウトサイダーの人生。何もかも思い通りにいかない人の焦りと諦念を淡々と描きながらも、生活に追われて夢と輝きを失ってしまう人に向ける視線は温かい。俳優の熱演も見どころで、無名時代のファン・ジョンミンやリュ・スンボムも現在の活躍を予告する演技を見せている。

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 「ワイキキ・ブラザーズ」は興行的に成功したとは言えないが、観客や評論家からは高い評価を受けた。1990年代までの多くの韓国映画が強いメッセージ性を備えていたのとは対照的な、作家主義的な感性が人々の心をつかんだのだ。韓国映画の歴史において2000年代前半という時代は「多様なジャンル映画が花開いた時代」といえる。この時期は教育機関で映画を学んだ人や芸術家、作家といったさまざまな人材が映画界に参入した。同時期に製作システムが確立してきたこともあり、韓国の映画産業は急激な広がりをみせた。

 今回、映画祭でこの時代の映画を再見し、発想力の豊かさに改めて驚かされた。特定のジャンルに偏りがちな商業映画へのアンチテーゼとしての映画祭の力を再認識した。

(写真・文 芳賀恵)

写真
1〜3:上映後の質疑応答に参加する(右から)イム・スルレ監督、パク・ヘイル=5月3日
4:映画祭メーン会場
5:「ワイキキ・ブラザーズ」場面写真=映画祭事務局提供

posted by 映画の森 at 21:27 | Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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