
30歳のサシャは、夏の盛りに突然世を去った。恋人のロレンス(アンデルシュ・ダニエルセン・リー)は、サシャの妹ゾエ(ジュディット・シュムラ)と顔を合わせる。突然の別れが訪れたベルリン。深い悲しみが残るパリ。生活が少しずつ戻るニューヨーク。3つの都市で3度の夏を過ごし、残された人たちは人生の光を取り戻していく──。
ミカエル・アース監督の長編2作目。アース監督は昨年、3作目の「アマンダと僕」で東京国際映画祭で最高賞「東京グランプリ」を受賞した。「アマンダと僕」と「サマーフィーリング」には共通点が見い出せる。「サマーフィーリング」のロレンスは恋人を失い、「アマンダと僕」はテロで弟が姉を亡くした。喪失と再生はアース監督の一貫したテーマのようだ。

作品のアプローチも2作品は共通している。傷ついた主人公の心は、人々との触れ合い、なにげない日常を通じ、淡々と静かに癒されていく。心の解放を表すかのように、自転車や公園が使われる。監督は非常にパーソナルな出来事を繊細に映していく。個人の再生を時間をかけて描いた「サマーフィーリング」に対し、「アマンダと僕」では残された人々の絆にも踏み込んだ。
恋人のサシャを失ったロレンスと、サシャの妹ゾエの関係は、友達以上恋人未満の親密さ。ロレンスの姉、仲間たち、姉の店で働く女性など、周囲の人々との触れ合いの中、ロレンスの心は癒されていく。

ダイレクトに悲しいシーンはあえて描かない。前後の場面を使い、ロレンスの心の揺れが表現される。平和で穏やかな日常の風景と対比させるように、取り残された主人公の喪失感を際立たせる。心に染み入る演出だ。公開中の「アマンダと僕」が気に入った人には、おすすめの作品。
(文・藤枝正稔)
「サマーフィーリング」(2015年、仏・独)
監督:ミカエル・アース
出演:アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ジュディット・シュムラ、マリー・リビエール、フェオドール・アトキン、マック・デマルコ
2019年7月6日(土)、シアターイメージフォーラムほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
https://summerfeeling.net-broadway.com/
作品写真:(C)Nord-Ouest Films - Arte France Cinema - Katuh Studio - Rhpone-Alpes Cinema