
紀元517年、暗黒時代のイングランド。“ブラッドクイーン”こと、魔女ニムエ(ミラ・ジョボビッチ)は疫病を拡散させ、世界を手に入れようとしたが、アーサー王の聖剣エクスカリバーに野望を断たれる。バラバラにされたニムエの死体は、人里離れた地に封印された──。
マイク・ミニョーラ原作のコミック「ヘルボーイ」は、ギレルモ・デル・トロ監督の手により「ヘルボーイ」(04)と「ヘルボーイ ゴールデン・アーミー」(08)の2作品として映画化された。監督はニール・マーシャル。「ドッグ・ソルジャー」(02)の鬼才が「ヘルボーイ」を現代に復活させた。原作者ミニョーラが製作総指揮、脚本にも参加したという。
ハリウッドのアメコミ・ヒーロー映画は、一つのジャンルとして確立している。「スーパーマン」や「バットマン」で知られる“D.C.コミックス”と、「アベンジャーズ」で知られる“マーベル・コミック”が、しのぎを削りあうように大ヒット作を立て続けに製作してきた。

そんな2強ブランドと一線を画す異色の存在が“ダークホースコミックス”の「ヘルボーイ」だ。地獄の悪魔の子として生まれ、人間に育てられたダークヒーローは、善にかえったものの、体に流れる悪の血に苦しみ、何かの拍子に悪魔に戻る。極秘の超常現象調査防衛局(B.P.R.D.)のエージェントとして、悪魔の力を駆使して人間界を守っている。
ヘルボーイの敵が魔女ニムエだ。人間への復讐心に突き動かされて、1500年の時を超えて復活し、疫病をまき散らし、世界征服を目論む。イノシシのような獣人グルアガッハを従え、地球の女王として君臨しようとする。「女王には王が必要」と、白羽の矢を立てられたヘルボーイは、魔女ニムエと戦い始める。

騎士道物語「アーサー王と円卓の騎士」を巧みに取り入れながら、地球を守る悪魔の子と、地球征服を狙う魔女の戦いを、VFX満載で描いたダークファンタジーだ。一方、見たこともない様な巨大モンスターやクリーチャーが登場。モンスター映画の一面も持っている。
デル・トロ版でヘルボーイを演じたロン・パールマンも凄い存在感だったが、今回のハーバーもいい。善と悪の間で揺れる新生ヘルボーイとして、申し分のない役作り。魔女ニムエには「バイオハザード」シリーズのミラ・ジョボビッチ。適役である。悪魔と対等に戦える最強の女優で、最高のキャスティングだ。
監督のニール・マーシャルはホラー映画「ディセント」(05)、「マッドマックス」に通じる荒廃した近未来アクション映画「ドゥームズデイ」(08)というジャンル映画で頭角を現した。ダークヒーローとクリーチャーとの戦いをえげつなく描いた。D.C.コミックスやマーベルコミックとはまた一味違う、血しぶき多めで刺激的なアメコミ・ヒーローの快作だ。
(文・藤枝正稔)
「ヘルボーイ」(2019年、米)
監督:ニール・マーシャル
出演:デビッド・ハーパー、ミラ・ジョボビッチ、イアン・マクシェーン、サッシャ・レイン
2019年9月27日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://hellboy-movie.jp/
作品写真:(C)2019 HB PRODUCTIONS, INC.