2019年12月25日

「男はつらいよ お帰り 寅さん」人気シリーズ50作目、思い出を名場面とともに

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 山田洋次監督の人情喜劇シリーズ50作目「男はつらいよ お帰り 寅さん」。“寅さん”こと渥美清が亡くなった翌年の「寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」(97)以来、22年ぶりに製作されたシリーズ最新作だ。おなじみの主題歌を桑田佳祐が歌っている。

 人気小説家の満男(吉岡秀隆)は、中学3年生の娘と2人暮らし。妻の七回忌の法要で柴又の実家を久々に訪れ、母・さくら(倍賞千恵子)と父・博(前田吟)、近所の人たちと昔話に花を咲かせる。騒々しく楽しかった伯父・寅次郎との日々。いつも味方でいてくれた寅さんに会えず、満男の心には大きな穴が開いていた。出版社の担当編集者・高野(池脇千鶴)から次作の執筆を勧められるが、今ひとつ気乗りしない。そんなある日、書店のサイン会で、初恋の人・イズミ(後藤久美子)と再会する──。

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 「男はつらいよ」は、渥美は病で42作目「ぼくの伯父さん」(89)以降助演に回り、寅次郎の妹・さくらの息子・満男が実質的に主演を務めて48作まで続いた。渥美の没後、シリーズはいったん終了。今回の「男はつらいよ お帰り 寅さん」は、シリーズの後日譚で、満男主演シリーズの完結編といって問題ないだろう。

 満男は50歳になり、7年前に妻に先立たれ、娘・ユリ(桜田ひより)と二人で暮らしている。両親は健在だが、肝心の寅次郎の消息は語られない。小説家でひとり親の満男の物語が進む一方で、登場人物が寅次郎を回想する形で旧作の名場面が挿入される。現在のシーンに、過去作から抜き出した寅次郎がCG合成され、満男に寅次郎が寄り添う。

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 「寅次郎忘れな草」(73)から「寅次郎紅の花」(95)まで、4度も恋仲となったマドンナ・リリー(浅丘ルリ子)の登場。舞台となる柴又の団子屋「くるまや」。隣接する印刷工場を経営するタコ社長の娘・朱美(美保純)と息子。過去の物語が現在と地続きになっている。

 池脇演じる編集者・高野の登場は、満男の新たなパートナー登場を予感させ、山田監督の人情喜劇作家としての健在ぶり感じさせる。主演を亡くし、完結できなかった「男はつらいよ」。執念でシリーズ50作目を撮り上げた監督の作家精神に頭が下がる。

(文・藤枝正稔)

「男はつらいよ お帰り 寅さん」(2019年、日本)

監督:山田洋次
出演:渥美清、倍賞千恵子、吉岡秀隆、後藤久美子、前田吟、池脇千鶴、夏木マリ、浅丘ルリ子、美保純、佐藤蛾次郎

2019年12月27日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://www.cinemaclassics.jp/tora-san/movie50/

作品写真:(C)2019 松竹株式会社

posted by 映画の森 at 14:48 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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