
学園祭の準備で慌ただしい聖新学園高校3年C組の生徒たち。担任の教師・下部(中村獅童)に呼び出された樫村怜奈(橋本環奈)ら36人は、突然不気味な映像を見せられる。それは特定の行動を取ると自ら命を絶ってしまう“自殺催眠”の暗示だった──。
宮月新原作、近藤しぐれ作画の同名コミックを、「さまよう小指」(14)、「春子超常現象研究所」(15)の竹葉リサが監督した。
担任の下部がかけた“自殺催眠”。「スマホを使う」「泣く」「あくびをする」などのなにげない日常の行動に、催眠発動のシグナルが100あるという。シグナルの詳細は担任の下部だけが知っている。生徒たちは生きるために下部を問い詰めるが、彼は答えを封印するかのごとく教室の窓から飛び降り、自殺してしまう。

催眠を解く方法を失い、絶望状態に置かれた生徒たちは、下部が残したメッセージからシグナルを解こうと奮闘する。だが、次々と下部の罠にはまり命を落としていく。疑心暗鬼に駆られ、相手を出し抜こうとする生徒がいる一方、仲間のために犠牲となって死ぬ者もおり、校内は阿鼻叫喚の修羅場と化す。
外部と連絡が取れず、学校から出られず、死に直面した生徒たちがパニックになる。無人島に隔離された中学生のサバイバル映画「バトル・ロワイアル」(00、深作欣二監督)を彷彿とさせ、竹葉監督も「影響を受けた」と明言している。「クラスの中で生徒1人だけが生き残る」設定や、15歳未満は鑑賞できない「R15」指定なことも共通する。文字で表しがたい壮絶な死に様が描かれる。

「1000年に1度の逸材」と期待される橋本が、血まみれの制服姿で生き残りゲームに挑んでいる。多くの生徒たちの中では存在感が抜きん出ており、物語の流れが想像できてしまうのが難点か。担任役の中村は、短い出演ながら独特の不気味さ。生徒役の俳優たちと格の違いを見せ付けた。
「バトル・ロワイアル」から20年。遺伝子は「シグナル100」に受け継がれたようだ。担任が仕掛けたシグナルに生徒たちが翻弄されるように、観客も監督の巧みなトラップに惑わされるだろう。
(文・藤枝正稔)
「シグナル100」(2020年、日本)
監督:竹葉リサ
出演:橋本環奈、小関裕太、瀬戸利樹、甲斐翔真、中尾暢樹、福山翔大
2020年1月24日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
https://www.signal100.jp/
作品写真:(C)2020「シグナル100」製作委員会