2020年09月16日

「喜劇 愛妻物語」濱田岳と水川あさみ、令和らしい夫婦喜劇

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 結婚10年。うだつの上がらぬ脚本家・豪太(濱田岳)は、妻のチカ(水川あさみ)、小学生の娘アキ(新津ちせ)と四国へ旅に出る。現地を舞台にした脚本を書くため、5日間の取材旅行だ。しかし、豪太は「旅の間に妻とのセックスレスを解消する」とひそかに考えていた──。「百円の恋」(14)、「嘘八百」(18)の脚本家・足立紳による長編監督2作目。昨年の東京国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞した。

 年収50万円ほどの豪太は、家計を支えるチカ、娘のアキと東京の小さなアパートで暮らしている。夫妻は3カ月間セックスレス。豪太は隙あらばと狙っているが、拒否され続けて悶々としている。妻が大黒柱として稼ぎ、豪太は食わせてもらっており、頭が上がらないのだ。毎日家でゴロゴロしている豪太に、チカは容赦なく罵声を浴びせていた。

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 そんな豪太に仕事が舞い込んだ。旧知のプロデューサーに預けていたホラーの脚本が映画化されることになり、さらに別の企画を出すよう言われたのだ。豪太は四国にいる「高速でうどんを打つ女子高生」を題材に脚本を書くため、取材旅行を決定。 取材費が出ないため、チカを運転手にすることに。東京から鈍行列車とレンタカーを使い、家族3人で四国へ向かうのだ。

 足立監督が自伝小説をを映画化したため、キャラクターが生き生きしている。どこまでも情けない豪太は濱田にぴったり。愛すべき超ダメ夫として、妻役の水川と冷めきった倦怠期夫婦を演じる。大部分は親子3人芝居で、夫婦のシーンはほとんど機嫌が悪い。水川は眉間にしわを寄せ、夫に罵声を浴びせて叱咤する。恐ろしい妻だ。

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 そんな夫婦の仲を取り持つのが娘のアキだ。ひょうひょうとした様子が愛おしい。演じた新津は「パプリカ」をヒットさせた「Foorin」のメンバーで、期待の子役である。チカの友人で優雅なセレブに夏帆、豪太のかつてのバイト仲間かつ浮気相手に大久保佳代子。大久保のエロい演技はインパクト絶大だ。

 足立作品の主人公の原動力はずばりセックスといえる。デビュー作「14の夜」(16)主人公はAV女優に憧れる中学生だった。監督は男の悲しい性を喜怒哀楽をからめて描くのがうまい。心温まるエピソードも挿入し、下世話になりがちな話をバランス良く着地させている。俳優たちの好演も手伝い、令和の時代らしい夫婦喜劇に仕上がった。

(文・藤枝正稔)

「喜劇 愛妻物語」(2020年、日本)

監督:足立紳
出演:濱田岳、水川あさみ、新津ちせ、大久保佳代子

2020年9月10日(金)、新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://kigeki-aisai.jp/

作品写真:(C)2020「喜劇 愛妻物語」製作委員会
posted by 映画の森 at 18:13 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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