
昨年9月にオンラインで開催された第30回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2020の舞台あいさつ付き上映会が2月11日、北海道夕張市で行われ、グランプリ作品「湖底の空」の佐藤智也監督らが駆けつけた。
冬の風物詩だったゆうばり映画祭は2020年から夏開催になることが決まっていたが、その初回は新型コロナウイルス感染防止のため、オンライン開催に転換せざるをえなかった。
今回の上映会は、スクリーンでも映画を楽しんでもらいたいと企画されたもので、1月末から東京、神戸、佐賀、名古屋のミニシアターで順次開催。夕張市が最終回となった。

複合施設「りすた」で行われた上映会は、2019年3月に廃線となったJR北海道石勝線夕張支線のラストランを描く「夕張支線ノスタルジア」(西田知司監督)でスタート。続いてファンタスティック・ゆうばり・コンペティション部門グランプリとシネガーアワード(批評家賞)を受賞した「湖底の空」が上映された。
「湖底の空」は日中韓の合作。韓国インディペンデント映画界で活躍する女優イ・テギョンが主演し、日中で活動する阿部力、韓国で活動する武田裕光らが共演している。
登壇した佐藤監督は韓国映画界との縁について「2000年にゆうばりで『L’Ilya』が審査員特別賞を受賞し、姉妹映画祭の富川国際ファンタスティック映画祭に招かれたことがきっかけ」と明かし、「ゆうばりで生まれた縁を今後も広げていきたい」と語った。
中国語や日本語のせりふをこなしながら双子の一人二役を高い演技力で表現したイ・テギョンは、ビデオメッセージを寄せ「3カ国のみんなが一丸となって力を注いだ映画。心が温かくなってくれたらうれしい」とあいさつした。
「湖底の空」は新宿K‘s cinemaで今夏に一般公開される予定。
今年は9月に開催
2021年の映画祭は9月16〜20日に開催することが決まり、作品の募集も始まった。現時点では、夕張市内の上映とオンライン上映のハイブリッド方式が予定されている。
ただ、ゆうばり映画祭には逆風が吹く。最近、参加者の宿泊と上映に使われていた市内のホテルの運営会社が経営破綻したのだ。コロナ禍による観光客の激減が背景だった。市内には他に大規模ホテルがなく、代わりの宿泊場所や上映会場は未定だ。
2007年の市の財政破綻に続く最大のピンチに直面し、キャッチフレーズの「世界で一番、楽しい映画祭」を実現できるか、これからが正念場となる。
(文・写真 芳賀恵)
「湖底の空」公式サイト
https://www.sora-movie.com/movie
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭映画祭
https://yubarifanta.jp
作品エントリーページ
https://yubarifanta.jp/entry2021en/
写真1:舞台挨拶する佐藤智也監督(左)
写真2:「湖底の空」(映画祭事務局提供)