2021年03月06日

「野球少女」プロ野球選手になりたい 女子高生、不屈の挑戦

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 天才少女がプロ球界で活躍する話ではない。手に汗握る熱戦が描かれるわけではない。ただ「プロ野球選手になりたい」女子高校生が、開かない扉をたたき続ける物語だ。

 韓国高校野球で20年ぶりの女子選手となり、「天才少女」と騒がれたチュ・スイン(イ・ジュヨン)。トライアウト(入団テスト)でプロ入りを目指すが、家計を支える母(ヨム・ヘラン)は就職を促し、野球部の監督も「女子野球で趣味として続けたほうがいい」と諭す。球速134キロの投球も、新たに赴任してきたコーチのチェ・ジンテ(イ・ジュニョク)に「通用しない」とこき下ろされる。

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 先行きが見えないまま、黙々と練習を続けるスイン。手に血をにじませ深夜まで投げ込む姿に、最初は見下していたジンテは心動かされる。自分も一度はプロを夢見たものの、かなわず酒におぼれ、妻子に見放された過去があったからだ。「私の未来は誰にも分からない。私でさえ」と訴えるスインに、ジンテは秘策を思いつく。

 スインの熱意を、幼なじみでプロ指名を受けたチームメートのジョンホ(クァク・ドンヨン)が応援。頑なだった母も娘の熱意を認める。ジンテの奔走でトライアウト参加が許可され、スインは夢見たプロ挑戦のマウンドに立つ。

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 日本でもヒットしたドラマ「梨泰院クラス」で、トランスジェンダーの調理師を演じたイ・ジュヨンが、再び偏見や理不尽と戦う役に挑んでいる。スインのモデルは1997年、韓国で女性で初めて高校野球部に所属し、プロ公式試合で登板したアン・ヒャンミ選手。イ・ジュヨンは40日間の特訓を受け、すべてのシーンをスタントなしで演じた。

 スインはただ、プロに「挑戦したい」だけだ。にもかかわらず、周囲の大人たちは次々と代替案を出してくる。「プロでは通用しない」「女子野球があるじゃないか」。スインの投球を評価した球団さえ「選手ではない別の道」を提案する。女性が男性と同じ土俵に立つには、これほど多くの壁がある。道のりの遠さに、少なくない女性が自分を重ね合わせ、心震わせるだろう。

(文・遠海安)

「野球少女」(2019年、韓国)

監督:チェ・ユンテ
出演:イ・ジュヨン 、イ・ジュニョク 、ヨム・ヘラン、ソン・ヨンギュ 

2021年3月5日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://longride.jp/baseballgirl/
 
作品写真:(c) 2019 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED

posted by 映画の森 at 16:07 | Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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