

「第31回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021」は9月20日、東京・FS汐留ホールでクロージングセレモニーを行い、ファンタスティックゆうばりコンペティション部門のグランプリに田中大貴監督の「PARALLEL」を選出した。映画祭は新型コロナウイルス感染防止のため2年連続でオンライン開催となり、16日から動画配信サービスHuluと映画祭公式サイトで国内外の72作品が上映された。
■グランプリはスプラッター×純愛
「PARALLEL」はアニメキャラクターのコスプレで殺人を繰り返す男と心身に深い傷をもつ女性の心のふれあいを描く長編。スプラッターとラブストーリーのバランスが絶妙な、ゆうばりらしい作品だ。矢崎仁司審査員長ら5人の審査員が全員一致で推した。
田中監督は「たくさんの人に支えてもらってできた作品なのでうれしい」とコメント。日本映画の海外進出を支援する新設のフィルミネーション賞とのダブル受賞で、喜びも2倍となった。

■短編グランプリ女優は2年連続の受賞
インターナショナル・ショートフィルム・コンペティションのグランプリは、韓国のチョ・チャングン監督の「おそとはキケン」。家から一歩も出ないで過ごしている女性ウェブ小説作家が、出前に来た男性の顔を偶然見たことから、平穏な日常に波風が立ち始めるラブコメディーだ。
韓国からリモート参加したチョ監督は「感染者が増えた時期に撮影していたので苦労した」と回想。小中和哉審査員長は「ひきこもりだが、お金を稼いでネットで買物をして運動もするという、生活が充実しているキャラクター。とても現代的でユニークだ」と評した。
主演のイ・テギョンは昨年のファンタスティックゆうばりコンペ部門のグランプリ「湖底の空」に主演しており、2年連続の「グランプリ女優」となった。

■多彩なプログラム
スペシャル・プログラム部門ではジャンルを超えた多彩な作品が上映された。俳優・クリエイターとしてマルチに活躍する“ゆうばり常連”の斎藤工は、齊藤工名義で企画・脚本・監督を務めた「ATEOTD」「COMPLY+−ANCEコンプライアンス」を出品した。
日本映画の中で異彩を放ったのは日本育ちのミャンマー人、モンティンダン監督の「エイン」と「めぐる」。監督は今年2月にミャンマーで起きた軍事クーデターに反対する活動をしていたところ、4月に同国で逮捕され、現在も収監中だという。上映は「めぐる」の宣伝プロデューサーでもあるジャーナリストの北角裕樹さんのメッセージから始まり、北角さんはミャンマー情勢に関心を持ってほしいと訴えた。
(文・芳賀恵)
<受賞一覧>
◇ファンタスティック・ゆうばり・コンペティション部門
グランプリ「PARALLEL」田中大貴監督
審査員特別賞「12ヶ月のカイ」亀山睦実監督
北海道知事賞「愛ちゃん物語♡」大野キャンディス真奈監督
シネガーアワード(批評家賞)「令和対俺」大久保健也監督
フィルミネーション賞「PARALLEL」田中大貴監督
◇インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門
グランプリ「おそとはキケン」チョ・チャングン監督
優秀芸術賞「Ad Lib」ジョセフ・カテ監督
「くっつき村」長谷川千紗監督
「The Bell」恵水流生監督
写真1:ファンタスティック・ゆうばり・コンペティション部門グランプリ「PARALLEL」田中大貴監督(右)
同2:インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門グランプリ「おそとはキケン」チョ・チャングン監督(右)
同3:作品写真「PARALLEL」=映画祭事務局提供
同4:「おそとはキケン」=同