2022年01月04日

「明け方の若者たち」明大前で出会った二人 ほろ苦くひねりの効いた恋愛映画

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東京・明大前で開かれた大学生活最後の飲み会。そこで出会った彼女(黒島結菜)に僕(北村匠海)は一目で恋をした。下北沢のスズナリで観た舞台、高円寺で一人暮らしを始めた日、フジロックに対抗するために旅した夏。しかし、社会人になった後、「こんなはずじゃなかった人生」に打ちのめされる──。

 人気ライター、カツセマサヒコの同名小説デビュー作を映画化。出演は「東京リベンジャーズ」(21)の北村、今年のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」のヒロインに抜擢された黒島。監督は新進監督15人によるオムニバス映画「21世紀の女の子」(19)の松本花奈。

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 内定を勝ち取った学生たちの飲み会。にぎわいの中で疎外感を抱く僕に、スマホをなくした彼女が「私の番号に電話をかけて」と頼んできた。言われるままにかけると、その場でスマホは見つかった。その後、先に出て行った彼女から僕のスマホにメッセージが入る。「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」。僕は飲み会を中座し、彼女が待つ公園に向かった。落ち合った二人は、ハイボール缶を片手に趣味や好きな音楽を語り合い、意気投合する。

 若い男女の恋愛ドラマは、去年公開された「花束みたいな恋をした」(21)を思い出させる。2作品とも起点は明大前。固有名詞を挙げて語られる音楽やサブカルチャーが二人をつなぐ。就職した僕のリアルな社会人生活。時間とともに変化していく恋。2作品には共通点が多い。しかし、「明け方の若者たち」は中盤以降、あっと驚く仕掛けにより、予想外の方向に動き出す。ちょっとしたミステリー作品をしのぐ巧みな構成だ。

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 恋の高揚感、就職の理想と現実。思い悩む一方で、働くことで広がる交友関係や同期社員との友情。しかし、彼女の真実が明かされたことで、僕の人生が重くなっていく後半がポイントだ。

 どこかつかみどころのない僕役の北村は、今時の若者を等身大で好演。黒島のクールでミステリアスな彼女も適役。松本監督は若干23歳。今後の活躍も楽しみな、ほろ苦くひねりの効いた恋愛映画だ。

(文・藤枝正稔)

「明け方の若者たち」(2021年、日本)

監督:松本花奈
出演:北村匠海、黒島結菜、井上祐貴、山中崇、楽駆、菅原健、高橋ひとみ、濱田マリ

2021年12月31日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://akegata-movie.com/

作品写真:(C)カツセマサヒコ・幻冬舎/「明け方の若者たち」製作委員会

posted by 映画の森 at 14:07 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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