中国。成績優秀な進学校の高校3年生、チェン・ニェン(チョウ・ドンユィ)。大学入試を前に殺伐とする校内で、参考書に向かい息を潜めていた。そんな中、クラスの女子生徒がいじめを苦に校舎から飛び降り自殺する。生徒たちが遺体にスマホを向ける光景に耐えられず、チェンは遺体に自分の上着をかけてやる。しかし、それをきっかけにいじめの矛先はチェンに向かう──。
出演はチャン・イーモウ監督「サンザシの樹の下で」(10)でデビューしたチョウ・ドンユィ、アイドルグループ「TFBOYS」のイー・ヤンチェンシー。監督は香港の俳優、エリック・ツァンの息子で、「七月の安生」(16)を監督したデレク・ツァン。「少年の君」で香港最大の映画賞・香港電影金像奨で作品賞、監督賞、主演女優賞など8冠を達成した。
孤独な優等生の少女と、街頭に生きる不良少年の心を交流を描いた青春映画……と言いたいところだが、壮絶ないじめ、苛烈な受験戦争、ストリートチルドレンなどの社会問題を描いた青春サスペンスといえる。
優等生と不良少年の設定は、日本の劇画「愛と誠」の思い起こすが、チェンは「愛と誠」の主人公のように金持ちではない。母親は犯罪すれすれの商売をしながら娘を学校に通わせている。ほかに身寄りがなく、母親に頼るしかないチェンは、学校帰りに集団暴行を受けていた少年シャオペイ(イー・ヤンチェンシー)を救い、二人は互いを意識し始める。
中国で「13億人の妹」と呼ばれるチョウ・ドンユィが、体当たりで演じている。20代後半でも高校生役に違和感がなく、いじめで髪の毛を切られて坊主頭にまでなる。同調するイーも坊主頭に。いじめは思わぬ方向に進み、衝撃的な展開になる。スリリングで鋭い演出が観客を揺さぶり続ける。孤独な二人の心の引き合う力は次第に強くなり、運命共同体になる後半は圧巻だ。
(文・藤枝正稔)
「少年の君」(2019年、中国・香港)
監督:デレク・ツァン
出演:チョウ・ドンユィ、イー・ヤンチェンシー、イン・ファン、ホアン・ジュ、ウー・ユエ、ジョウ・イエ
2021年7月16日(金)、新宿武蔵野館ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
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