
韓国映画「天命の城」が2018年6月22日公開される。17世紀、清が朝鮮半島に攻め入った「丙子の役」を題材に、朝鮮の王と家臣の苦悩を描く。「トガニ 幼き瞳の告発」(11)、「怪しい彼女」(14)と一作ごとに異なる作風を打ち出すファン・ドンヒョク監督。「今の韓国によく似た状況だった。しっかり時代考証し、当時の様子を忠実に再現した」と語った。
1636年12月。清が12万の大軍で朝鮮半島に攻め込む「丙子の役」が勃発した。李氏朝鮮の王・仁祖(パク・ヘイル)は南漢山城(現在のソウル南東部)に籠城するが、極寒の中で包囲され、窮地に陥る。物資調達もままならず、民と兵の苦しみは募り、朝廷内の意見は二分。和平交渉を求める大臣(イ・ビョンホン)と、徹底抗戦を主張する大臣(キム・ユンソク)の間で、王の苦悩は深まる。
韓国でベストセラーとなったキム・フンの小説を映画化。イ・ビョンホン、キム・ユンソク、パク・ヘイルら実力派俳優の演技合戦も見ごたえある作品だ。
ファン監督との主なやり取りは次の通り。
──当時の状況は、韓国の現状によく似ているということです。具体的にどんな点が似ていますか。
「丙子の役」の当時 朝鮮は明の「家臣」でした。さらに清という新勢力が現れ、明との対立が激化したため、朝鮮は明を重視し、清を野蛮な国として排除しようとしました。間に立たされて大変な立場だったのです。
一方、現代では朝鮮戦争後、韓国は米国と同盟関係を維持していますが、中国が大国に成長して力を付けました。米国からは高高度防衛ミサイル(THAAD)ミサイルを配備しろと圧力をかけられ、中国は配備を受けるなら経済的な報復をするといってきます。当時と今はよく似ているでしょう。
イ・ビョンホンは生まれながらの俳優 ──主演俳優3人、イ・ビョンホン、キム・ユンソク、パク・ヘイルについて、それぞれの魅力はどんな点にありますか。
イ・ビョンホンは生まれながらの俳優。天賦の才があり、頭脳も明晰です。両方持ち合わせている人はあまりいません。彼は持っているものが多く、どう引き出せばいいか、自分なりに頭で判断し、しっかり計算できます。まさにプロの俳優で、隣で見ていてもたびたび驚かされました。どんな役にも合わせて変身できる人ですね。
キム・ユンソクは本能的な俳優です。内に秘めたエネルギーがものすごい。じーっと何かを待っている野獣、虎のような印象です。いつエネルギーがあふれ出すか分からないのですが、あふれた時は大変な力を発揮します。
パク・ヘイルはミステリアス。顔立ちや眼差し、声。かよわい少年のようで、優しい印象もあるけれど、見方によっては悪の部分も持っている。多様な側面があり、一つの姿に限定できない俳優です。

──イ・ビョンホン、キム・ユンソクの二人が掛け合うクライマックスは見ごたえ十分でした。
二人は演出の指示必要としない俳優なので、大きな介入はしませんでした。直前に論争するシーンをたくさん撮っており、二人は役になりきり、完ぺきに解釈してくれました。私はできるだけ何も言わず、自由に、気楽に演じてもらえるようにしました。カメラを数台用意し、ワンテイクで切らずに流れを大事に撮りました。
寒さを見せる必要があった ──極寒の時期のロケでした。苦労はありましたか。
寒さを見せる必要があり、常に寒くなければなりませんでした。雪、つらら、氷、白い息。視覚的なものが必要だったので、寒い方がありがたかったんです。逆に寒くならず困ったことの方が多かった。雪のシーンで雨が降ったり、川を渡るシーンで氷が薄かったり。撮ろうとしたら氷が割れる音がして、消防隊に「落ちたら遺体も探せない。流されて春になってやっと見つかることになりますよ」と言われました。氷が厚く張るまで、はらはらしながら1カ月待ちました。韓国も温暖化のせいで、気温の変化が激しくなりました。急に温かくなったり、寒くなったりするんです。
──原作小説を映像として再現するにあたり、苦労したことはありましたか。
世界遺産(に指定された史跡・南漢山城)で撮影できたことが助けになりました。当時着ていた服の色、道具、武器など、しっかり時代考証して作ることにこだわりました。当時の服の色も、これまでの時代劇のようにカラフルではなく、資料に忠実に再現しました。
特に「鳥銃」舞台が登場する作品は初めてだと思います。(16世紀に豊臣秀吉が朝鮮と戦った)文禄・慶長の役の時、日本側が残していったもので、そのまま朝鮮軍がもらい受けて使っていました。これもしっかり考証して再現しました。

──3作品まったく異なるタイプが続いています。次はどんなものを撮りたいですか。
今は何も決まっていません。休んでいます。製作を務める作品のため、シナリオを書いていますが、コミカルな作品なので、セリフを書いていて楽しい。次はコミカルな作品もいいですね。
(文・写真 遠海安)
「天命の城」(2017年、韓国)
監督:ファン・ドンヒョク
出演:イ・ビョンホン、キム・ユンソク、パク・ヘイル、コ・ス、パク・ヒスン
2018年6月22日(金)、TOHOシネマズ シャンテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://tenmeinoshiro.com/作品写真:(C)2017 CJ E&M CORPORATION and SIREN PICTURESALL RIGHTS RESERVED
posted by 映画の森 at 12:31
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