
1979年、米西部コロラド州コロラドスプリングス。町で初めて黒人の刑事、ロン・ストールワース(ジョン・デビッド・ワシントン)が誕生した。しかし、書類管理担当の記録室に配属され、差別的な刑事に嫌がらせを受け、退屈な任務にうんざりしたロンは、署長にダメ元で「潜入捜査官になりたい」と訴え、晴れて希望がかなえられる──。
実在の元刑事ロン・ストールワースの回想録を、「マルコムX」(92)のスパイク・リーが脚本化し、監督した。「マルコムX」主演のデンゼル・ワシントンの息子、ジョン・デビッドが主役を務める。第71回カンヌ国際映画祭でグランプリ、第91回米アカデミー賞で脚色賞を受賞した。

作品のコピーは「黒人刑事が白人至上主義団体『KKK(クー・クラックス・クラン)』に潜入捜査」だが、実際に潜入するのは、ロンの身代わりとなる白人刑事フィリップ(アダム・ドライバー)だ。黒人差別の歴史、KKKの内情や活動、時代背景をスリリングに描きつつ、最終的にはKKKを笑い飛ばそうとする。監督は今も根強く残る白人至上主義について、挑発しながら問題提起する。
三角頭巾の白装束が象徴的なKKKは、アラン・パーカー監督の「ミシシッピー・バーニング」(88)などにも登場したが、内部を詳細に描いた映画は初めてではないか。トランプ大統領の誕生後、米国では17年、南部バージニア州で白人至上主義者と反対派が衝突。死者が出る事態になり、トランプ氏が「双方に責任がある」と発言して波紋を広げた。KKKは今もなお活動を続けており、米国の対立と分断は拡大している。

時代背景、言葉のニュアンスなど、日本人に分かりづらい点はあるものの、黒人刑事がKKKに潜入する着眼点に引き付けられる。黒人と白人が手を組んで任務を遂行する姿は、米国の掲げる理想であり、作品の面白さにつながっていく。リー監督はKKKの手法を痛快に糾弾する。往年の勢いを失いつつあったリー監督が、再び輝きを取り戻した。現代社会の問題点を鋭く突く力作だ。
(文・藤枝正稔)
「ブラック・クランズマン」(2018年、米)
監督:スパイク・リー
出演:ジョン・デビッド・ワシントン、アダム・ドライバー、
ローラ・ハリアーパ、トファー・グレイス、ヤスペル・ペーコネン
2019年3月22日(金)、TOHO シネマズ シャンテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
https://bkm-movie.jp/
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