
米西海岸サンフランシスコから885キロ。人里離れた広大な土地に世界で最も呪われた巨大な屋敷がある。建設者は“西部を征服した”ウィチェスター銃を作った一族の一人で、莫大な財産を相続したサラ・ウィンチェスター(ヘレン・ミレン)だ。屋敷は8年間、365日、24時間、絶え間なく増築され、7階建てで部屋は500。どこにも行きつかない階段や迷路のようなホール、13にまつわる装飾など、奇怪な構造になっていた──。
米国でテレビ特番が組まれるほど有名な実在の幽霊屋敷「ウィンチェスターハウス」。出演は「クイーン」(06)のエリザベス女王役で米アカデミー賞主演女優賞を受賞したヘレン・ミレン、「ターミネーター 新起動 ジェニシス」(15)のジェイソン・クラークら。「ジクソウ ソウ・レガシー」(17)のスピエリッグ兄弟がメガホンをとった。

「ウィンチェスター銃のせいで命を落とした人の霊を閉じ込める」と、取りつかれたように屋敷を増築するサラ。ウィンチェスター社の経営陣は、サラを精神鑑定して経営権を奪うため、精神科医のエリック(ジェイソン・クラーク)を屋敷に送る。しかし、エリックの目にサラの異常は感じられず、逆に屋敷で不可解な恐怖現象を体験する。
時代設定は1906年。20世紀初頭の米西海岸を舞台に、監督はクラシカルなゴシック・ホラー作りを目指す。外部から来たエリックの目を通し、屋敷で起きる不可解な出来事を積み重ね、ウィンチェスターハウスの素顔を明かしていく。中盤までは抑制されたアナログなショック演出を小出しに。後半は屋敷を使った大胆な仕掛け、最新のデジタル技術でたたみかける。

かなりゆったりとドラマが進み、サラを演じるミレンの演技が物語に説得力を持たせる。ホラー初出演のミレンは、黒いドレス姿で役に命を吹き込んだ。クラークも地味ながら堅実に演じ、物語を引き締めている。実際の屋敷を使った映像、凝りに凝ったセット。ウィンチェスター銃にまつわる因果応報的な解釈が要になる。全体に踏み込みが足りない感もあるが、目ざといホラー映画ファンにはおすすめだ。
(文・藤枝正稔)
「ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷」(2018年、米・豪)
監督:マイケル・スピエリッグ、ピーター・スピエリッグ
出演:ヘレン・ミレン、ジェイソン・クラーク、サラ・スヌーク、フィン・シクルーナ=オープレイ、エイモン・ファーレン
2018年6月29日(金)、TOHO シネマズシャンテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://winchesterhouse.jp/
作品写真:(C)2018 Winchester Film Holdings Pty Ltd, Eclipse Pictures, Inc., Screen Australia and Screen Queensland Pty Ltd. All Rights Reserved.