2014年08月02日

「ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪」 興奮の波状攻撃 ツイ・ハーク絶好調!

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 2012年に日本で公開された武侠アクション「王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件」(10)。前日譚にあたるシリーズ第2弾だ。前作に続いてメガホンを取ったのは、ツイ・ハーク監督。奇想天外なアイデアと神業的アクションに磨きがかかり、前作以上にエキサイティングな作品に仕上がった。

 時は紀元665年の唐朝末期。皇帝・高宗と皇后・則天武后(カリーナ・ラウ)が敵国に差し向けた水軍艦隊が、龍王(シードラゴン)と見られる怪物に襲撃され、全滅してしまう。若い女性を生贄(いけにえ)にすれば龍王の怒りは鎮まる――。ちまたに噂が広まり、美女のほまれ高い花魁のイン(アンジェラベイビー)が、龍王を祀った廟に監禁される。

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 ところが、そこにインを誘拐しようとする男たちが現れる。間一髪のところでインを救出したのは、大理寺(最高裁)に赴任したばかりの若き判事、ディー・レンチェ(マーク・チャオ)だった。ディーは誘拐騒動で司法長官・ユーチ(ウィリアム・フォン)に不審を抱かれて投獄されるが、獄中で知り合った医官のシャトー(ケニー・リン)とともに脱獄に成功。イン救出時に姿を現したモンスター“鉄の爪”を手がかりに、国家転覆の陰謀をかぎつける。
 ディーは自分を追い回すユーチに事の次第を話し、則天武后に上奏。シャトーと3人手を組み、逆賊たちに戦いを挑む――。

 冒頭の海戦シーンから、興奮のるつぼに放り込まれる。その興奮冷めやらぬまま、新手の趣向が飛び出し、またまた興奮。休む間もなく、次々と奇想天外なアイデアが繰り出される。ツイ・ハークならではの、興奮の波状攻撃とでも言おうか。娯楽映画はこうでなくちゃいけない。

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 登場キャラクターがまた多彩である。龍王をはじめ、鉄の爪、毒蜂、呪いの虫・蠱(こ)といった生物キャラが、どれもこれもたまらなく不気味。そんな中で海中を駆け、天を翔る白馬の勇ましさ、爽やかさ。正邪のコントラストが実に鮮やかである。

 クライマックスは、前作でも見られた“垂直のアクション”。今回の舞台は断崖絶壁だ。7人が地面に垂直にぶら下がり死闘を繰り広げるアクション・シーンは空前絶後。天才ツイ・ハークなればこそなし得た荒技といってよいだろう。

 前作に続き則天武后を演じたカリーナ・ラウは、“ドSキャラ”を前面に打ち出して存在感を増した。エンディングでの度を越したおふざけは、オールラウンダーの面目躍如か。

(文・沢宮亘理)

「ライズ・オブ・シードラゴン」(2013年、中国・香港)

監督:ツイ・ハーク
出演:マーク・チャオ、キム・ボム、ウィリアム・フォン、ケニー・リン、アンジェラベイビー、チェン・クン、カリーナ・ラウ

2014年8月2日(土)、シネマート新宿、シネマート六本木ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.u-picc.com/SEADRAGON/

作品写真:(c)2013 HUAYI BROTHERS MEDIA CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED.
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2014年07月12日

「レクイエム 最後の銃弾」、10月4日公開決定 タイで大規模ロケ、香港骨太犯罪アクション

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 香港犯罪映画「レクイエム 最後の銃弾(原題:掃毒)」が10月4日、日本公開されることがこのほど決まった。かつてのジョン・ウー(呉宇森)監督作品を彷彿とさせる本格派“香港ノワール”だ。

 監督はジャッキー・チェン作品など娯楽アクション作品に定評のあるベニー・チャン(陳木勝)。主演は「奪命金」(ジョニー・トー監督)のラウ・チンワン(劉青雲)、「ドラッグ・ウォー 毒戦」のルイス・クー(古天楽)、「ビースト・ストーカー 証人」のニック・チョン(張家輝)。

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 薬物犯罪捜査担当の香港警察の警官3人が、タイの麻薬王と対決。3人の友情、裏切りを絡め、タイでのロケ撮影で描かれる骨太な作品となっている。2014年10月4日(土)、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほかで全国順次公開。

作品写真:(c)2013 Universe Entertainment Ltd. All Rights Reserved.

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2014年04月29日

香港映画特集「パン兄弟の帰還、“極限”ミステリーの悦楽」 5月3日から4本一挙公開

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 香港出身の双子監督オキサイド・パン、ダニー・パンの4作品を一挙公開する特集「パン兄弟(ブラザーズ)の帰還、“極限”ミステリーの悦楽」が5月3日(土)スタートする。アジアのサスペンス、ホラー映画界を代表するパン兄弟。近作を一度に楽しめる貴重な機会だ。

 パン兄弟は90年代後半、タイを拠点に映画製作を本格化。「レイン」(99)、「The Eye アイ」(02)がヒットし、米ハリウッドでもサム・ライミ製作の「ゴースト・ハウス」(07)、ニコラス・ケイジ主演の「バンコック・デンジャラス」(08)を監督した。香港でも話題作を次々発表し、アジアのサスペンス、ホラー映画の第一人者となった。

 今回の特集で公開されるのはアーロン・クォック(郭富城)探偵を演じる「極限探偵」シリーズ3本と、ラウ・チンワン(劉青雲)主演の「惨殺のサイケデリア」(12)。いずれもパン兄弟得意の本格サスペンスで、5月3日から1週間ごとに連続公開される。

 第1弾は「影なきリベンジャー 極限探偵C+(原題:C+偵探)」(07)。タイ中華街の私立探偵チェン・タム(アーロン・クォック)に、ある女性の捜索依頼が入る。チェンが探し始めると、女性に関係する人物が次々遺体で発見される。

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 第2弾は5月10日公開の「冷血のレクイエム 極限探偵B+(原題:B+偵探)」(11)。娼婦惨殺事件が発生し、タイ警察の刑事チャック(リウ・カイチー)がチェンに協力を依頼。第2、第3の殺人事件が起き、チャックとチェンも何者かに命を狙われる。

 第3弾は5月24日公開の「コンスピレーター 謀略 極限探偵A+(原題:同謀)」(13)。両親の死の真相を探るため、チェンはマレーシアへ。タイ、マレーシア、中国・広州をまたにかけ、手がかりをつないで謎を解いていく。

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 第4弾は5月17日公開の「惨殺のサイケデリア(原題:追凶)」(13)。「自分を逮捕してほしい」と香港警察に現れた男と連続殺人事件の発生。担当刑事のワン(ラウ・チンワン)らが謎に巻き込まれる。

 特集「パン兄弟(ブラザーズ)の帰還、“極限”ミステリーの悦楽」は5月3日(土)、シネマート六本木ほかで全国順次公開される。

(文・遠海安)

作品写真:
「影なきリベンジャー 極限探偵C+」(c)2007 Universe Entertainment Ltd. All Rights Reserved.
「冷血のレクイエム 極限探偵B+」(c)2011 Universe Entertainment Ltd. All Rights Reserved.
「コンスピレーター 謀略 極限探偵A+」(c)2013 Universe Entertainment Ltd. All Rights Reserved.
「惨殺のサイケデリア」(c)2013 Universe Entertainment Ltd. All Rights Reserved.

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2014年03月04日

チョ・ジョンソク来日 映画「観相師」「逆鱗」 時代劇へ活躍の場広げ

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 韓国の俳優チョ・ジョンソクが2014年2月14日、東京都内で記者会見とファンミーティングを開催した。4月に予定されているドラマ「最高です!スンシンちゃん」の放送開始、ファンクラブ発足を記念しての来日となった。

 1980年生まれの33歳。2004年にミュージカル俳優としてデビュー。12年の映画「建築学概論」のコミカルな役で注目され、「最高です!スンシンちゃん」では人気アイドルのIU(アイユー)と共演。今年はヒョンビン主演の歴史映画「逆鱗」の公開も控えている。

 「最高です!スンシンちゃん」では芸能事務所社長役。クールに振る舞うものの、どこか抜けていて憎めないキャラクターを好演した。「少しプライドが高く、かっこつけようとするのに、なかなかかっこよくならないところが自分に似ている。かわいい魅力が出るよう役作りをした」と語った。

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 韓国では“国民の妹”と呼ばれ、大人気のIUとの共演。周りからは羨望ややっかみの言葉がかけられたという。キスシーンの撮影は、雨で撮影が何度も延期に。「天もやきもちを焼いているのかと思った」と話し、会場の笑いを誘っていた。

 ミュージカルからキャリアを始め、デビュー10周年を迎えた。ドラマ、映画と活動の場を広げているが「どんな形でも演技は変わらない。ミュージカルはライブなので、観客と一緒に呼吸して楽しむ。映画やドラマは映像が残り、コレクションとして価値がある。舞台以上に細部にこだわれる点もいいと思う」と持論を展開した。

 6月28日公開の「観相師」(13)では、韓国を代表する実力派ソン・ガンホと共演した。初の時代劇で「メークなど準備に時間がかかった」と苦労したそう。今年公開予定の「逆鱗」は、朝鮮時代の王暗殺を描く作品。自分の役を「当時の暗殺者。劇中かなりの人数を殺している」と語った。

 「最高です!スンシンちゃん」は2014年4月21日(月)、WOWOWプライムで放映がスタートする。

(文・写真 岩渕弘美)
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2013年10月29日

第26回東京国際映画祭 香港映画「激戦」ダンテ・ラム監督に聞く 「困難を乗り越える人間を描きたい。ニック・チョンとは言葉で表せない信頼関係だ」

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 第26回東京国際映画祭(10月17〜25日)ワールド・フォーカス部門で、香港映画「激戦」が上映された。総合格闘技(MMA)をテーマに、心に傷を負った男二人の奮闘と再起を描く。映画祭に合わせて来日したダンテ・ラム(林超賢)監督は「人がいかに困難を乗り越えるか。私の人生観に関連している」と語った。

 物語の舞台はマカオ。かつてチャンピオンとして無敵を誇ったファイ(ニック・チョン=張家輝)は、落ちぶれて借金取りに追われる日々を送る。富豪の息子チー(エディ・ポン=彭于晏)は、父の会社が倒産。格闘技で賞金を稼ぐため、ファイにコーチを頼み込む。やがて二人はタッグを組み、一発逆転の大勝負に打って出る。

 ニック・チョン、エディ・ポンが厳しいトレーニングを経て、見事な肉体とアクションを見せる。「ビースト・ストーカー 証人」(08) 、「コンシェンス 裏切りの炎」(10)、「密告・者」(10)、「ブラッド・ウェポン」(12)など骨太な物語が得意な監督が、その手腕をいかんなく発揮した作品だ。

 主なやり取りは次の通り。 

「ニックと自分はよく似ている。彼はどこかでチャンスを待っていた」
 ──主演のニック・チョンは、監督の「ビースト・ストーカー 証人」で、見違えるような演技を見せた。何が転機になったと思うか。

 彼とは2001年に知り合い、コメディー映画(『走投有路』)を撮った。とても楽しかったが、あんな厳粛な芝居で喜劇に出る俳優は初めてで、とても驚いた。その後もたびたびやり取りがあり、「証人」に至った。

 彼はどこかでチャンスを待っていたのではないか。しっかりした演技、それまでと違う自分を見せたかったのでは。自分の殻を打ち破り、コメディー専門のイメージを変えたかったのだろう。「証人」では、ためにためたものを一気に爆発させたようだった。「証人」が転機に見えるのは、そのせいかもしれない。

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 ──以後続けて起用している理由は。

 彼と私は物の考え方がよく似ている。長い付き合いで、監督と俳優として互いを信じている。文字や言葉で表せない信頼だ。だから私は「彼にはこれができるはず」と考えるだけでいい。逆に彼は私の作品に出ることで、それまでと違う効果を期待している。私にとって彼も、想像以上のことを見せてくれる俳優だ。だから起用を続けている。

 ──監督の作品は男と男の物語だったり、失敗を背負った人間が主人公であることが多い。なぜか。

 私の人生観に関連している。人は誰でも失敗や困難、問題を経験する。しかもそれらは常に身の回りで起きる。人生で前に進むためには、困難ををいかに克服するかが大切だ。人が困難を打ち破る状況が大好きなんだ。だから結果的に物語がそうなるのだと思う。

「テーマは自分で考える。人から与えられた物は撮れない」
 ──脚本家のジャック・ン(呉煒倫)とは、どんな形で物語を作っていくのか。

 だいたい私がアイデアを思いつき、彼に話して書いてもらうことが多い。彼は学校を出た直後から私と一緒に働いている。非常に重要なパートナーだ。感覚や情景などさまざまなことを話し合う。「ブラッド・ウェポン」以降は私も書きたくなり、自分で書くことも増えた。

 ──監督の作品は社会派の側面を持ちつつ、娯楽作品として楽しめる。香港映画界を取り巻く環境は変わり続けているが、「こういう映画は撮りたくない」と考えることはあるか。

 テーマは自分で考えるものだ。人から与えられたテーマは撮れない。あくまで自分が思いついた話で映画を作る。どんな方向性であれ、人から押し付けられたものは撮れない。「中国でも、香港でも、日本でも売りたい」と考えて撮るのでは、結局混乱するだけだ。中国なら中国だけ考えればいい。次の(香港で起きた警官殺害事件が題材の)「魔警(原題)」は、中国当局の検閲をパスしないかもしれないが、まずは作ってみる。通らないなら仕方がない。

 市場を先に考えるのではなく、自分の感性に従い、冷静に物語を作っている。あくまで自分が何を見せたいかが重要だ。商業的に撮るのもいいし、中国に合わせて撮るのもいいが、自分の発想でなければ意味がない。いい映画に地域性はなく、どこの国の人が見ても面白いものだ。

 ──監督自身が好きな映画監督や作品は。

 リンゴ・ラム(林嶺東)監督の作品。好きでよく見てきた。中国の検閲制度がなければ、僕の方がもっと激しい作品を撮るかもしれないね(笑)。

(文・写真 遠海安)

作品写真:(c)Bona Entertainment Company Limited
posted by 映画の森 at 17:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする