
2012年に日本で公開された武侠アクション「王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件」(10)。前日譚にあたるシリーズ第2弾だ。前作に続いてメガホンを取ったのは、ツイ・ハーク監督。奇想天外なアイデアと神業的アクションに磨きがかかり、前作以上にエキサイティングな作品に仕上がった。
時は紀元665年の唐朝末期。皇帝・高宗と皇后・則天武后(カリーナ・ラウ)が敵国に差し向けた水軍艦隊が、龍王(シードラゴン)と見られる怪物に襲撃され、全滅してしまう。若い女性を生贄(いけにえ)にすれば龍王の怒りは鎮まる――。ちまたに噂が広まり、美女のほまれ高い花魁のイン(アンジェラベイビー)が、龍王を祀った廟に監禁される。

ところが、そこにインを誘拐しようとする男たちが現れる。間一髪のところでインを救出したのは、大理寺(最高裁)に赴任したばかりの若き判事、ディー・レンチェ(マーク・チャオ)だった。ディーは誘拐騒動で司法長官・ユーチ(ウィリアム・フォン)に不審を抱かれて投獄されるが、獄中で知り合った医官のシャトー(ケニー・リン)とともに脱獄に成功。イン救出時に姿を現したモンスター“鉄の爪”を手がかりに、国家転覆の陰謀をかぎつける。
ディーは自分を追い回すユーチに事の次第を話し、則天武后に上奏。シャトーと3人手を組み、逆賊たちに戦いを挑む――。
冒頭の海戦シーンから、興奮のるつぼに放り込まれる。その興奮冷めやらぬまま、新手の趣向が飛び出し、またまた興奮。休む間もなく、次々と奇想天外なアイデアが繰り出される。ツイ・ハークならではの、興奮の波状攻撃とでも言おうか。娯楽映画はこうでなくちゃいけない。

登場キャラクターがまた多彩である。龍王をはじめ、鉄の爪、毒蜂、呪いの虫・蠱(こ)といった生物キャラが、どれもこれもたまらなく不気味。そんな中で海中を駆け、天を翔る白馬の勇ましさ、爽やかさ。正邪のコントラストが実に鮮やかである。
クライマックスは、前作でも見られた“垂直のアクション”。今回の舞台は断崖絶壁だ。7人が地面に垂直にぶら下がり死闘を繰り広げるアクション・シーンは空前絶後。天才ツイ・ハークなればこそなし得た荒技といってよいだろう。
前作に続き則天武后を演じたカリーナ・ラウは、“ドSキャラ”を前面に打ち出して存在感を増した。エンディングでの度を越したおふざけは、オールラウンダーの面目躍如か。
(文・沢宮亘理)
「ライズ・オブ・シードラゴン」(2013年、中国・香港)
監督:ツイ・ハーク
出演:マーク・チャオ、キム・ボム、ウィリアム・フォン、ケニー・リン、アンジェラベイビー、チェン・クン、カリーナ・ラウ
2014年8月2日(土)、シネマート新宿、シネマート六本木ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://www.u-picc.com/SEADRAGON/
作品写真:(c)2013 HUAYI BROTHERS MEDIA CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED.
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