2013年10月21日

「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」 リョン・ロクマン&サニー・ルク監督に聞く 緻密な犯罪アクション 「香港映画は死んでいない。香港のために撮りたかった」

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 香港犯罪アクション「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」が10月26日公開される。香港警察の複雑な内部構造と権力対立を、緻密な脚本と演出で描く力作だ。リョン・ロクマン(梁楽民)=写真右、サニー・ルク(陸剣青)=写真左=監督のデビュー作。二人は「香港映画は死んでいない。香港のために作品を撮りたかった」と語った。

 香港中心部の繁華街で爆破事件が起き、警官5人が車ごと拉致された。捜査を指揮する「行動班」の副長官・リー(レオン・カーファイ=梁家輝)は、大規模な救出作戦を展開する。人質にはリーの息子も含まれていた。次第に強引になるリーに、「保安管理班」トップの副長官・ラウ(アーロン・クォック=郭富城)は反発。次期長官の椅子をにらみ、現場と事務方のトップ同士が対立を深める一方、二人に汚職捜査機関が嫌疑をかける。

 2012年の香港アカデミー賞(香港電影金像奨)で主要9部門を独占。香港では中国語映画の年間興行収入1位、中国でも同5位を記録するヒットとなった。

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 主なやり取りは次の通り。

ヒントは米大統領選 知恵比べ+アクション
 ──2008年の米大統領選にヒントを得たと聞く。警察を舞台にした理由は。

 リョン:香港ではここ数年、市民の間に政治や体制への不満、不安がたまっていた。香港人はよく自分たちの町を「アジアで最も安全な都市の一つ」と言う。しかし、「今後も現制度は続くのか」「将来も大丈夫なのか」と心配している。香港政府が危機に直面し、内部対立が起きるが、解決されて安全な都市が維持される。僕らは映画を通してそれを示し、彼らを励ましたかった。

 ──主演2人の起用理由は。

 ルク:脚本を書く段階から俳優のイメージが必要だった。警察の副長官ポストといえば、40代後半がいい。考え抜いた末、2人に落ち着いた。レオンの役は警察の実働部隊。常に動いていてパワフル、覇気があるイメージなので、彼に決めた。クォックの役は頭脳部隊。CIA(米中央情報局)であれば情報分析官で、(米人気ドラマ『24 TWENTY FOUR』の主人公)ジャック・バウアーのような人物も想定した。

 ──参考にしたり、影響を受けた事件や出来事はあったか。

 リョン:物語は完全なフィクションだ。脚本を書く段階で、訪れる危機を想像して仮説を立てた。その上で、あんな事件が起きたら警察はどう動くか、警官の友人に意見を聞いた。危機自体は仮説だが、対応は警察の実際の動きとして描いている。

 ──香港ではこれまで犯罪アクションが多く作られてきた。他の作品と最も異なる点、アピールしたい点は。

 ルク:過去に多くの犯罪映画が作られたので、なかなか脚本が書けなかった。ヒントになったのは08年の米大統領選。(民主党で)ヒラリー(・クリントン)とオバマ(現大統領)が頭を使って戦っていた。組織の上層部の知恵比べにアクションを足せば、独自性が出せると考えた。

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現場支えて20数年 激動の香港映画界で
 ──リョン監督は美術、ルク監督は助監督としてのキャリアが長い。映画界に入った経緯は。

 ルク:僕は歩き始める前から、父に連れられ映画館に通っていた。家業は繊維関係。80年代以降、香港の繊維産業はどんどん中国に移り、仕事は減っていった。高校を出て働こうと思った時、たまたま新聞で「助手募集」の求人広告を見た。たどりついた先は映画会社の「シネマ・シティ」。配給部署で助手として採用された。しばらくして「君、制作部に入れ」と言われ、いつの間にか現場に出るようになり、今日に至る。高校卒業が85年、映画界入りは89年。長いね。業界でも長老だ(笑)。ここ十数年、香港映画は下り坂で、レベルも落ちていると思うよ。

 リョン:最近中国の短文投稿サイトで「香港映画は過去の遺物」とか「もう死んだ」なんて書かれて、すごく腹が立つ(笑)。僕らがまだ撮ってないのに、そんなこと言うなって。僕は94年に(映画会社の)「UFO」に入った。90年代、UFOは良作を多く生んだ。あの頃は美術を勉強した人間なら、現場のつらさをいとわなければ、仕事はいくらでもあった。それから今までずっと美術の仕事だ。

 ──香港映画は製作本数が減っている。現場の人々が一番苦労していることは。

 ルク:(しばらく考えて)先輩たちを批判することになるかもしれないが……映画製作にかかわる人間が、目先のことしか考えないようになった。投資に対する回収を過分に望むようになった。わずかな投資で、10日や15日の短期間で撮影し、利益を求める。するとどうしても品質は下がる。問題は深刻で悪循環を招いている。

 リョン:監督になる前のここ1〜2年、繰り返し先輩たちに言われてきた。「撮るなら中国へ行ったほうがいい。市場も大きいし、将来性もある」と。しかし、本当に香港映画に将来はないんだろうか。僕はしっかりした映画を撮り、香港の人たちに見てもらいたかった。今回も結果的に香港でもほかの国でも評価は高く、やればできるじゃないかと感じた。

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 ──製作の初期段階から中国市場を意識しなかったのか。

(二人同時に)考えなかった。香港のために撮ったんだ。

 ルク:中国で売ることはまったく考えなかった。社長(プロデューサーのビル・コン=江志強)に脚本を見せたら、「ああ、これは香港映画だな。合作映画にはならないだろう」と言う。その後、社長は「中国でも売れるのでは」と考え始め、現地でいろいろ意見を聞いてきた。中国で売るには脚本段階で当局の審査を受けなければならない。幸い細かい手直しだけで、ほとんど問題なく許可が下りた。

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2013年09月07日

「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」 10月26日公開、監督来日へ

 香港映画「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」の10月26日公開がこのほど決定し、リョン・ロクマン(梁楽民)、サニー・ルク(陸剣青)監督の来日が決まった。

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2013年08月15日

香港映画特集上映「パン・ホーチョン、お前は誰だ!? 第2弾」 8月24日スタート 「恋の紫煙」2部作、「低俗喜劇」など8作品

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 香港映画の“鬼才”に迫る特集上映「パン・ホーチョン、お前は誰だ!? 第2弾」が8月24日から、東京・シネマート六本木で2週間限定開催される。初期の短編から最新作まで8作品を一挙紹介。奇想天外な“パン・ホーチョンの世界”が堪能できるラインナップだ。

 パン・ホーチョンは1973年、香港生まれ。14歳から自主製作映画を撮り始め、92年ごろにテレビ局で脚本家として活動を開始。01年に「ユー・シュート、アイ・シュート」で長編監督デビューした。一筋縄ではいかないストーリー展開、辛らつなブラックユーモア、痛烈な社会批判、独特の映像美などが特徴で、中国返還後の香港映画界を担う作り手の1人として知られる。日本でも東京国際映画祭で特集が組まれるなど、熱狂的なファンも多い。

 今回の特集上映は11年に続き2年ぶり2度目。前回も上映された初期の短編「夏休みの宿題 暑期作業』(99)、アダルトビデオを介した青春群像劇「AV」(05)、日本で初の劇場公開作品となった「ドリーム・ホーム 維多利亞壹號」(10)など5作品のほか、ラブコメディー「恋の紫煙」2部作、最新作「低俗喜劇」(12)も新たに加わった。

 中でも注目は、人気俳優ショーン・ユー、ミリアム・ヨンのコンビで撮った「恋の紫煙 志明與春嬌」(10)、「恋の紫煙2 春嬌與志明」(12)の2部作。街角の喫煙所で出会った化粧品販売員と年下の広告マンが、香港、北京と場所を移し、恋に仕事に揺れる様子を追う。広東語のスラングを全編に散りばめ、軽妙なタッチで描く都会派喜劇だ。

 2013年8月24日から、シネマート六本木で2週間限定開催。作品の詳細、上映スケジュールは公式サイトまで。

http://www.phc-movie.com/

作品写真:(c)Making Film/(c)Golden Scene/ (c)2012 Sun Entertainment Culture Ltd. All Rights Reserved.
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2013年04月15日

「ライジング・ドラゴン」 ジャッキー・チェン、最後の本格アクション 舞台・スケール壮大に

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 ジャッキー・チェンが“最後の本格アクション”と銘打つ大作「ライジング・ドラゴン」。世界に散逸した中国の秘宝「十二生肖」を求め、ジャッキー率いる冒険家チームが各地を駆け巡る。

 「十二生肖」とは、十二支の動物をかたどったブロンズ像。19世紀の清朝時代、英仏軍に略奪され行方不明になっていた。ジャッキー扮するトレジャーハンターのJCは大富豪の依頼を受け、失われたブロンズ像を探し始める。フランスの古城で手がかりをつかみ、舞台は南太平洋の孤島、火の粉を吹く活火山へ。同じく秘宝を狙う謎の組織の妨害を受けつつ、ジャッキーと仲間たちの宝探しの旅は進む──。

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 “最後の本格アクション”だけあって、舞台・スケールとも壮大だ。アクションも奇想天外。ジャッキーと仲間たちはさまざまな道具を使い、地上、空中、水中を縦横無尽に動き回る。人間の体全体で地面を滑るローラーブレード・スーツ。空中の自在に飛び回る小型パラグライダー。最後はスカイダイビングで活火山の火口へ空から突入する。

 見どころはなんといっても、ジャッキーの体を張ったアクションだ。1970年代から主役を張って40数年。超人的な身体能力、命知らずのスタントが身上のジャッキーも御年59歳。絶え間なく高まる観客の欲求、逆に衰えゆく体力の間で揺れながら、限界まで力を尽くした演技に頭が下がる。

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 荒唐無稽なストーリーもご愛嬌。右腕役の韓国俳優クォン・サンウ、ヒロインのジャン・ランシン、ヤオ・シントンら女優陣も“ジャッキー・ワールド”への参加に生き生き。エピソードもてんこ盛りのサービス精神で、観客を心ゆくまで楽しませる。細かいことは言わず、黙ってジャッキー運転のジェットコースターに乗ってみよう。

(文・遠海安)

「ライジング・ドラゴン」(2012年、香港・中国)

監督:ジャッキー・チェン
出演:クォン・サンウ、ジャン・ランシン、ヤオ・シントン、リアオ・ファン

2013年4月13日、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.rd12.jp/pc/

作品写真:(c)2012 Jackie and JJ Productions Limited, Huayi Brothers Media Corporation and Emperor Film Production Co Limited All rights reserved
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2013年03月19日

特集上映「レスリー・チャン・メモリアル」 急逝から10年 代表作9本を一挙紹介 3月30日スタート

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 香港が生んだ大スター、レスリー・チャン(張國榮)。4月1日で没後10年を迎えるにあたり、特集上映「レスリー・チャン・メモリアル」が3月30日、東京・シネマート六本木などでスタートする。日本未公開2作品を含む9作品を一挙紹介。一時代を築いた名優の代表作を、スクリーンで見られる貴重な機会だ。

 レスリー・チャンは、“香港ノワール”ブームの先駆けとなった「男たちの挽歌」(1986年、ジョン・ウー監督)、カンヌ国際映画祭で最高賞(パルムドール)を受賞した「さらば、わが愛 覇王別姫」(1993年、チェン・カイコー監督)、ウォン・カーウァイ監督の代表作「欲望の翼」(1991年)など数々の名作に出演した。社会派ドラマから軽いコメディーまで、ジャンルを問わず卓越した演技力を披露。1980〜90年代の香港映画黄金期を支えたが、2003年4月1日、46歳の若さで自ら命を絶った。

 今回上映される日本未公開作は、実力派女優アニタ・ムイと共演した傑作「ルージュ」(1987年、スタンリー・クワン監督)、レオン・カーフェイと共演したコメディー「レスリー・チャンの恋はあせらず」(1994年、ゴードン・チャン監督)。「ルージュ」では妖艶な御曹司、「恋はあせらず」ではお調子者の会社員と、レスリーの“カメレオン”ぶりを堪能できる。

 大ヒットシリーズ「男たちの挽歌」「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」のほか、ジョン・ウー監督の痛快娯楽サスペンス「狼たちの絆」(1991年)、アンディ・ラウとの豪華共演「上海グランド」(1996年、プーン・マンキ監督)も必見だ。

 また、シネマート六本木では企画「レスリー・チャン電影節」として、3月22日まで「さらば、わが愛 覇王別姫」、3月23〜31日まで「夢翔る人 色情男女」(1996年)も上映中。

(文・遠海安)

特集上映「レスリー・チャン・メモリアル」

上映作品は次の通り。[]内は原題。

「男たちの挽歌」[英雄本色](95分)
制作年:1986年(日本劇場公開:1987年04月)
監督:ジョン・ウー
出演:チョウ・ユンファ、ティ・ロン、レスリー・チャン、エミリー・チュウ
解説:男の友情と確執をスタイリッシュに描き“香港ノワール”という新ジャンルを確立した香港映画の金字塔。

「男たちの挽歌U」[英雄本色U](104分)
制作年:1987年(日本劇場公開:1989年07月)
監督:ジョン・ウー
出演:ディーン・セキ、ティ・ロン、チョウ・ユンファ、レスリー・チャン
解説:米ニューヨークを舞台に男たちの復讐劇を描くツイ・ハーク製作、ジョン・ウー監督コンビの大ヒットアクション続編。

「ルージュ」[胭脂扣](96分)
制作年:1987年(日本劇場未公開)
監督:スタンリー・クワン
出演:レスリー・チャン、アニタ・ムイ、アレックス・マン、エミリー・チュウ
解説:死んだ女性の霊が「心中相手の生まれ変わりを見つけるために広告を出したい」と新聞社員の前に現れる……。

「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」[倩女幽魂](93分)
制作年:1987年(日本劇場公開:1989年1月)
監督:チン・シウトン
出演:レスリー・チャン、ジョイ・ウォン、ウー・マ、ラム・ウェイ
解説:ツイ・ハーク×チン・シウトン──最強コンビが人間と幽霊の悲恋を描いたSFアクションホラーの傑作。

「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー2」[倩女幽魂U人間道] (103分)
制作年:1989年(日本劇場公開:1990年11月)
監督:チン・シウトン
出演:レスリー・チャン、ジョイ・ウォン、ミシェール・リー、ジャッキー・チュン
解説:忘れられない美貌の幽霊そっくりの娘が現れた――前作を超えるアクションで魅せる新たなラブストーリー。

「狼たちの絆」[縱四海](108分)
1991年(日本劇場公開:1991年7月)
監督:ジョン・ウー
出演:チョウ・ユンファ、レスリー・チャン、チェリー・チャン、ケン・ツァン
解説:幼い頃から犯罪教育を仕込まれた孤児3人の活躍を描くエンターテインメント快作。ジョン・ウー版「冒険者たち」。

「レスリー・チャンの恋はあせらず」[錦繡前程](100分)
1994年(日本劇場未公開)
監督:ゴードン・チャン
出演:レスリー・チャン、レオン・カーフェイ、ロザムンド・クワン、マイケル・ウォン
解説:金と女にだらしなく、友達から“疫病神”呼ばわりされる男が、それでもハッピーに生きていく爽やかな快作。

「上海グランド」[新上海灘](97分)
制作年:1996年(日本劇場公開:1998年4月)
監督:プーン・マンキ 
出演:アンディ・ラウ、レスリー・チャン、ニン・チン、ウー・シンクオ、チョン・ウソン
解説:1930年代の異国情緒あふれる上海を舞台に2大スター夢の競演で贈る一大アドベンチャーロマン大作。

「恋戦。 OKINAWA Rendez-vous」[戀戰沖繩](99分)
2000年(日本劇場公開:2001年7月)
監督:ゴードン・チャン
出演:レスリー・チャン、レオン・カーフェイ、フェイ・ウォン、ジジ・ライ
解説:真夏の沖縄を舞台に、3人の男女が恋と犯罪の熱いバトルを繰り広げる過激なロマンチック・コメディー。

2013年3月30日、シネマート六本木、シネマート心斎橋で上映。上映スケジュールなど詳細は公式サイトまで。

http://www.cinemart.co.jp/theater/special/leslie-cheung/lineup_02.html

作品写真:(c)2010 Fortune Star Media Limited.All Rights Reserved. 
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posted by 映画の森 at 08:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする