2011年10月9日、第16回釜山国際映画祭の招待作品部門「ガラ・プレゼンテーション」で、中国の時代劇アクション「捜査官X(原題:武侠)」が上映され、主演の金城武、湯唯(タン・ウェイ)、陳可辛(ピーター・チャン)監督が記者会見した=写真。初の本格アクション挑戦に、チャン監督は「武侠映画は中国文化の一部。私も子供のころから見て育ち、影響を受けてきた」と語った。
※編集部注:2011年11月13日付記事を再掲載します。
清朝末期の中国雲南省を舞台とした「捜査官X」。侠客の過去を隠して生きる男(甄子丹=ドニー・イェン)とその妻(タン・ウェイ)、村で起きた殺人事件を調べる捜査官(金城武)、犯罪組織のボス(王羽=ジミー・ウォング)を巡り、アクションとサスペンスが絡み合う時代劇大作だ。「片腕ドラゴン」(72)などで一世を風靡した往年のカンフー・スター、ジミー・ウォングの“怪演”も見どころとなっている。
監督生活をスタートさせた香港時代、「君さえいれば 金枝玉葉」(94)、「ラブソング」(97)などの名作を生み、現在は中国に拠点を移し活動するチャン監督。初の本格アクション挑戦について「私はカンフー映画を見て育った。“武侠映画”は中国文化の一部で、中国人の共通体験。過去に観た作品には、間違いなく影響を受けている」と説明。1960〜70年代に一時代を築いた張徹(チャン・ツェ)監督、姜大衛(デビッド・チャン)、狄龍(ティ・ロン)の名を挙げ、「意識したのは彼らの作品。子供時代の記憶にはいつも彼らの映画がある」と話した。
日本でも公開された「イップ・マン 葉問」(10)など、ここ数年主演作が目白押しのドニー・イェンが、今回はアクション監督も兼任している。現場での様子について、金城武は「ドニーは主演俳優、アクション指導、一人の“武侠家”の1人3役をこなした。非常に念入りに、丁寧に準備して臨む姿が印象的だった」と振り返った。今回は「ウィンター・ソング」(05)、「ウォーロード 男たちの誓い」(07)に続き、3度目のピーター・チャン作品出演となる。これまでの俳優人生を振り返り、「いつも現場で表れるもの、アイデアや動きを享受できるよう、自分のすべきことに全力を尽くしたい。一本一本撮り終えるごとに、違った感覚をつかんでいきたい」と意欲を示した。
チャン監督「中国映画界は大作が席巻。今後は作品の地域化が進むだろう」
最近では「孫文の義士団」(09)など、中国資本による大作の製作も手掛けるチャン監督。アジア映画界の今後について「中国の映画館へ行くと、10スクリーンのうち8つはハリウッドの同じ超大作をかけている。小さくてもいい作品がヒットする動きも出てきているが、巨大資本の大作が圧倒的に強い。それは問題でもあり、それぞれの国の作り手には厳しい状況で、変化を期待してもいる。しかし、将来的には映画のローカル化、地域化が一層進むと思う」と述べた。
また、10年に続き釜山映画祭参加となったタン・ウェイは「今年も釜山で誕生日(10月7日)を迎えられてうれしい」と話していた。
(文・写真 遠海安)
「捜査官X」(2011年、香港・中国)
監督:ピーター・チャン
出演:ドニー・イェン、金城武、タン・ウェイ
4月21日、新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://sousakan-x.com/
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