

「男たちの挽歌」(86)から25年。香港映画が最も輝いた時代を振り返る──。香港映画黄金期の傑作を集めた特集上映「香港電影天堂SPECIAL」が4月29日、東京・シネマート六本木でスタートする。上映されるのは1980年代後半から90年代初め、周潤發(チョウ・ユンファ)、張國榮(レスリー・チャン)、李連杰(ジェット・リー)らが主演した18作品。中国返還前夜、爆発的なエネルギーで傑作を量産した香港映画界の勢いを、スクリーンで感じられる貴重な機会だ。


目玉となるのは、チョウ・ユンファ全盛期の代表作9本。呉宇森(ジョン・ウー)監督とコンビを組んだ「男たちの挽歌」シリーズ4本が一挙上映され、今やジョン・ウー作品の象徴ともなった二丁拳銃、白い鳩、迫力ある銃撃戦の原点が見られる。共演した狄龍(ティ・ロン)、レスリー・チャン、梅艶芳(アニタ・ムイ)、李修賢(ダニー・リー)らの演技も見ごたえ十分だ。


また、80年代前半に起きた“香港ニューウェーブ”の代表作「風の輝く朝に」(84)は、共演の萬梓良(アレックス・マン)、葉童(イップ・トン)とともにみずみずしい演技が光る。乾いた空気とスタイリッシュな音楽が印象的な「友は風の彼方に」(86)。クエンティン・タランティーノ監督のデビュー作「レザボア・ドッグス」(92)の下敷きともされる犯罪映画の傑作だ。


当時“黄金コンビ”と呼ばれた鍾楚紅(チェリー・チェン)と共演した「誰かがあなたを愛してる」(87)も見逃せない。チョウ・ユンファの懐の深さ、繊細さが凝縮された1本で、香港映画史に残る傑作恋愛ドラマ。張艾嘉(シルビア・チャン)共演の「過ぎゆく時の中で」(89)は父子の絆を描き、杜h峰(ジョニー・トー)監督がメガホンを取っている。ジョン・ウー監督、レスリー・チャン、チェリー・チェン共演の「狼たちの絆」(91)は、フランスを舞台にしたアクション娯楽作。3人の呼吸がぴたりと合い、テンポのいいかけ合いも楽しい。


ジョン・ウー監督作品では、“異色の1本”と呼ばれる「ワイルド・ブリット」(90)もお目見えする。梁朝偉(トニー・レオン)、張学友(ジャッキー・チュン)、李子雄(レイ・チーホン)演じる香港の若者3人が、ベトナム戦争に巻き込まれる人間ドラマ。友情、愛、裏切りをテーマに、戦場の狂気と無情をあぶり出す。3人の好演も助けとなり、ずしりと手ごたえを感じさせる1本。


アクション、時代劇にも見逃せない作品がずらり。日本でもヒットしたSFファンタジー時代劇「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」(87)も、シリーズ3本が一挙上映される。ヒロインの王祖賢(ジョイ・ウォン)の美貌、レスリー・チャンの愛嬌、独創的なワイヤー・アクションが見事に融合した作品だ。


また、アクション時代劇ブームの先駆けとなり、ジェット・リー&徐克(ツイ・ハーク)監督の代表作ともなった「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」(91)シリーズ3本も上映。シリーズ最高傑作と呼ばれる第2作の「天地大乱」(92)では、「イップ・マン 葉問」「孫文の義士団」などで今も絶好調の甄子丹(ドニー・イェン)との一騎打ちが見ものだ。さらにジェット・リーと金城武が顔を合わせた「冒険王」(96)、往年の大スター・王羽(ジミー・ウォング)のカンフー・アクション「片腕ドラゴン」(72)も上映される。
(文・遠海安)
「香港電影天堂SPECIAL」は、4月29日〜6月3日にシネマート六本木、5・6月にシネマート心斎橋で開催。上映スケジュールなど詳細は公式サイトまで。
http://www.cinemart.co.jp/theater/hongkongmovie/
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