2014年07月10日

日台合作映画「南風」萩生田宏治監督に聞く 「台湾の匂い、風を体感してほしい」

「南風」萩生田宏治監督.jpg

 日本と台湾の合作青春映画「南風」が2014年7月12日公開される。台湾を訪れた日本人女性が人々や風景に触れ、行くべき道を見つけるロードムービー。「コドモのコドモ」(08)以来6年ぶりの新作となった萩生田宏治監督は「台湾の匂い、風を体感してほしい」と語った。

 夏。雑誌編集者の藍子(黒川芽以)が取材で台湾を訪れ、16歳の少女トントン(テレサ・チー=紀培慧)に出会い、自転車旅行に出発。美しい風景や食べ物、人々の温かさに触れながら、自分を見つめ直す。台湾北西部をぐるりとツーリングし、名所や景勝地を紹介していく。

南風.jpg

 「帰郷」(04)、「神童」(07)などの萩生田監督にとって初の合作映画で、スタッフ、キャストは日台混合チーム。若手俳優の初々しさ、夏の風景が爽やかな作品となった。

 「7月の一番いい時期に撮りました。準備期間が短かったので、思い切って行ってみて、その場で何ができるか試したい気持ちもありました。前に助監督としてついた林海象監督が台湾に縁が深く、ロケ撮影で来たこともあります」

南風2.jpg

 初めて単独でメガホンを取った台湾。文化の違いや時間の感覚、仕事の進め方には戸惑うこともあったという。

 「言葉が通じない人たちとの作業。『あうん』の呼吸で動くのではなく、しっかりと説明しなければだめだな、と。自分の意志を伝えたい気持ちが、一緒にいればいるほど湧くように出てきました。エネルギーを出していく自分が面白い。言葉は通じなくてもやりたいことを伝えるのは本当に大事なんだな、と」

 俳優は台湾からテレサ・チーのほか、旅先で出会う青年役でコウ・ガ(黄河)を起用した。二人はドラマ「危険心霊(原題)」(06)で共演した旧知の仲。オーディションで息の合った様子を見せたため、採用を決めたという。

 「二人は台本を渡せばすぐ演技に入っていきました。説明してもなかなか芝居にならない人もいるけれど、彼らは感受性、感覚がいい。通じ合える回路がある」

南風3.jpg

 台湾各地をめぐる旅には、日本統治時代の痕跡も随所に出てくる。たとえば台湾北西部・苗栗県の「龍騰断橋」跡。1908年、台湾総督府鉄道(当時)が建設したレンガ製の鉄道橋だ。現在は朽ちて崩れかけているが、主人公たちはその壮大な光景に息をのむ。台湾と日本の関係について、監督は語る。

 「台湾の人々は表面的には(日本人に)嫌な態度をする人はいません。でも絶対にそれだけではないだろうし、彼らの心情を掘っていけば、複雑なものも出てきたかもしれません。日本とアジアの国々は歴史的にいろいろあったが、今どう付き合うかが大切ではないでしょうか」

 台湾では聴覚障害のある青年が台湾を自転車で一周する映画「練習曲」(07)のヒットもあり、自転車ツーリングの人気が拡大している。監督は台湾の人たちと交流するうち「彼らの生まれた場所に寄せる思いが見えてきました」という。

 「取材で話を聞いた人はみな、心から自分の国の美しい風景を見たいと思っていました。自分の国を自分のことのように考えている。台湾の再発見といいましょうか。撮影でも1週間ぐらい雨もふらず、信じられないような青空も見ました。台湾の匂いや風を体感してもらえればうれしいです」

(文・遠海安)

「南風」(2014年、日本・台湾)

監督:萩生田宏治
出演:黒川芽以、テレサ・チー(紀培慧)、郭智博、コウ・ガ(黄河)

2014年7月12日(土)、シネマート新宿ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.nanpu-taiwan.com

作品写真:(c)Dreamkid/好好看國際影藝 
 
posted by 映画の森 at 09:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月04日

台湾映画「祝宴!シェフ」、11月1日公開決定 チェン・ユーシュン監督16年ぶり新作

祝宴!シェフ.jpg

 台湾映画「祝宴!シェフ(原題:総舗師)」が2014年11月1日、日本公開されることが決まった。「熱帯魚」(95)、「ラブゴーゴー」(97)のチェン・ユーシュン(陳玉勲)監督16年ぶりの新作だ。

 台湾の美食の都・台南を舞台に、伝説の料理人を父に持った娘が、人々を幸せにする“究極のレシピ”を探し求めるコメディー。昨年公開された台湾では大ヒットを記録。いきのいい台湾語のせりふ、食欲を刺激する台湾料理、人々の情と温かさが、台湾への旅情を誘う作品にもなっている。

 出演はドラマや映画で活躍する個性派女優、リン・メイシウ(林美秀)、若手人気俳優トニー・ヤン(楊祐寧)、キミ・シア(夏于喬)ら。「祝宴!シェフ」は11月1日、シネマート新宿ほかで全国公開。

(文・遠海安)

作品写真:(c)2013 1 PRODUCTION FILM COMPANY. ALL RIGHTS RESERVED.

タグ:告知
posted by 映画の森 at 12:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月03日

2014年台北映画祭、最優秀作品賞に韓国映画「10分」 非正規社員の日常を活写

台北映画祭受賞者.jpg

 台湾台北市で開催中の2014年台北映画祭で、コンペティション部門「国際青年監督賞」の受賞作品が7月2日発表され、最優秀作品賞に韓国の「10分(原題)」(イ・ヨンスン監督)が選ばれた。

 「10分」は社会的、経済的プレッシャーにさいなまれる若い男性非正規社員の日常を描く。イ監督は授賞式で「受賞は思いがけず驚いた。台湾の皆さんの反応は熱烈で感謝している」と語った。

 受賞理由は「監督は小さな世界にとらわれた人物の行動や反応をとらえ、生活の苦しみの中へ観客を引き込んだ。社会に生きる苦痛を的確に表現し、観る者の心を震わせた」。昨年の釜山国際映画祭でも観客賞など2賞、4月の香港国際映画祭で国際批評家協会賞を獲得している。

「10分」イ・ヨンスン監督.jpg

 映画祭は今年で16回目。若手の発掘を目指すコンペ部門には、日本の「祖谷物語 おくのひと」(蔦哲一朗監督)、台湾の「共犯」(張榮吉=チャン・ロンジー=監督)など12作品が出品。審査員は熊切和嘉監督ら5人が務めた。

(文・遠海安)
タグ:記者会見
posted by 映画の森 at 10:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月25日

「GF*BF」トークイベント 台湾民主化と日本との関係 「台湾アイデンティティー」酒井充子監督、作品背景を語る

「GFBF」酒井充子監督トーク.jpg

 公開中の台湾映画「GF*BF」で、台湾の日本語世代を追ったドキュメンタリー映画「台湾アイデンティティー」の酒井充子監督とキネマ旬報元編集長の植草信和氏が6月23日、東京・六本木でトークイベントに参加した。酒井監督はヤン・ヤーチェ(楊雅[吉吉])監督について「同世代だと直感した。2作目とは思えない」と絶賛した。

 1980年代後半から現在まで台湾激動の30年を、男女3人の愛と友情、葛藤に重ねた作品。劇中描かれる学生運動について、酒井監督は当時の台湾が「(戒厳令が解除され)やっと自由が来て、学生たちが声を上げられるようになった時期」と説明。作品の時代に至る背景を「50〜60年代、共産党のスパイと疑われて拷問を受けたり、無実の罪で処刑された人がたくさんいた」と語った。

gfbf_main.jpg

 また、作品に登場する日本語や歌など日本の影響について、酒井監督は「ファッションとしてより、台湾の脈々と続く歴史の中で残っている日本語」と指摘。中国語カバーで歌われた森進一の「港町ブルース」も「台湾で大ヒットした。日本の歌と知らない人が多いそうです」と話した。

 ともにホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督の代表作「悲情城市」(89)が台湾との本格的な出合いになっという二人。植草氏は「公開時に初めて台湾へ行き、台湾の空気を吸い、台湾という国を知った」と振り返った。酒井監督は「初めて『悲情城市』を観た時、映画で描かれていることがまったく分からなかった。その後いろいろと台湾映画を観て、一番印象に残っているのはツァイ・ミンリャン(蔡明亮)監督の『愛情萬歳』(94)。台北がとても魅力的に描かれていて、台湾へ行くきっかけをくれた」と語った。

gfbf_sub1.jpg

 さらに、「GF*BF」のヤン監督を「同世代だ」と直感したという酒井監督。「2作目とは思えない。(冒頭の舞台となった)高雄の緑が濃い感じが魅力的に描かれていて、台湾が大好きな私としてはうれしかった」と絶賛していた。

(文・遠海安)

「GF*BF」(2012年、台湾、原題:女朋友。男朋友)

監督:ヤン・ヤーチェ(楊雅[吉吉])
出演:グイ・ルンメイ(桂綸[金美])、ジョセフ・チャン(張孝全)、リディアン・ヴォーン(鳳小岳)

シネマート六本木、シネマート心斎橋ほかで全国順次公開中。

http://www.pm-movie.com/gfbf/

作品写真:(c)2012 Atom Cinema Co.,Ltd., Ocean Deep Films, Central Motion Picture Corporation, Huayi Brothers International Media All Rights Reserved.
タグ:イベント
posted by 映画の森 at 12:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月18日

「郊遊 ピクニック」ツァイ・ミンリャン&リー・カンション来日、あすまで連日ファンと交流

jiaoyou.jpg

 ベネチア国際映画祭審査員大賞の台湾映画「郊遊 ピクニック」(8月下旬公開)のツァイ・ミンリャン(蔡明亮)監督、主演のリー・カンション(李康生)がこのほど来日した。17日から3日間、東京・渋谷で前売り券販売イベントに参加するなど、積極的に作品をPRしている=写真。

 ベネチア映画祭金獅子賞(最高賞)受賞作「愛情萬歳」(94)、ベルリン国際映画祭グランプリの「河」(97)など、世界的に高く評価されてきたツァイ監督。すでに長編映画製作からの引退を発表しており、「郊遊 ピクニック」が最後の作品となる。

 この日は二人そろって登場。劇中リーが扮した役になぞらえ、看板を掲げて作品をPR。訪れたファンとの交流を楽しんだ。同イベントは18、19日の両日も午後6時半から15分間、監督とリーも参加して東京・渋谷のシアター・イメージフォーラム前で行われる。

(文・遠海安)

posted by 映画の森 at 11:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする