2013年07月24日

マイク・ハー来日 主演ドラマ「1/2の両想い Spring Love」放送スタート 「今後はさまざまな役に挑戦」

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 7月10日に日本初放送がスタートした台湾ドラマ「1/2の両想い Spring Love」主演のマイク・ハー(賀軍翔)がこのほど来日し、プレミア試写会に参加した。台湾ドラマ界の第一線で活躍し、デビュー10年を迎えたマイク・ハー。「今後はさまざまな役に挑戦したい」と語った。

 「1/2の両想い Spring Love」は、台湾の温泉旅館が舞台のラブコメディー。マイク・ハーは日本人の母を持つ双子の青年を1人2役で演じている。性格が正反対の双子について「自分は明るくて活発。子どもっぽい面もある。(演じた双子の)弟のキャラクターに似ている」と話す。

 デビューから10年を経て、台湾ドラマ界の顔として第一線で活動を継続中。これまでのキャリアを振り返り「成長したと思う。以前はつらい時に監督に訴えたりしたが、今は心をコントロールできるようになった。作品が終われば役はすっぱり忘れ、切り替えるようにしている」という。

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 最近ではドラマを通じて台湾を知る日本人ファンも多い。台湾ドラマの魅力について「最近の作品は台湾の名所、文化に結び付けて語るものが多い。温泉なら100年の歴史があるように、台湾にもいいところがたくさんあると知ってほしい。日本と縁の深い場所も多く、ドラマを通じて台湾の良さを見つけてもらえれば」と話した。

 間もなく30代。デビューからの10年を「目隠しされて懸命に走ったような毎日だった。一人で家庭を切り盛りするような忙しさ。30代は自分を充実させたい。やりたいことをやって、外国にも行きたい」と抱負を語る。今後挑戦したい役は昨年ヒットした香港映画「寒戦」(12)で、アーロン・クォック(郭富城)が演じた警官のような役という。「今までアイドルドラマばかりだったので、さまざまな役に挑戦してみたい」と意欲を見せた。

(文・遠海安 写真・岩渕弘美)

ドラマ「1/2の両想い Spring Love」(2013年、台湾、全22話)

出演:マイク・ハー、ナイロン・チェン、ダーユエン、佐藤麻衣

原題: 美人龍湯[日本初放送] [HD][日本語字幕版]
2013年7月10日、CSホームドラマチャンネル(http://www.homedrama-ch.com/)で放送開始。毎週木曜深夜1時15分〜2時15分、再放送毎週土曜午前11時半〜12時半、毎週水曜午後5時〜6時。
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2013年06月29日

第15回台北映画祭2013開幕 オープニング作品「失魂」 ジミー・ウォング、ジョセフ・チャンら参加 ピーター・チャン特集も

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「第15回台北映画祭2013」が6月28日、台湾台北市で開幕した。台湾映画の新作など170作品を上映する。

オープニング作品は、鍾孟宏(チョン・モンホン)監督のスリラー「失魂」。病を機に人が変わった息子と父の関係を、緊張感たっぷりに描く。上映後の質疑応答には、鍾監督、王羽(ジミー・ウォング)、張孝全(ジョセフ・チャン)、陳湘[王其](チェン・シャンチー)らが出席。往年のカンフー・スター王羽と、昨年の同映画祭も主演作「GF*BF(女朋友。男朋友)」が開幕を飾った張孝全の顔合わせとあって、チケットは発売早々に売り切れる人気となった。

「片腕ドラゴン」(72)などで一時代を築いた王羽も70歳。この日は杖をついての登場だったが、大スターの貫禄十分。終始緊張気味の張孝全と対照的に、冗談を飛ばすなどリラックスした様子で、会場を埋めた1000人を超す観客を喜ばせていた。

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 コンペティション部門の「国際青年監督賞」には、日本の下手大輔監督の「はなればなれに」(12)など12作品が出品。特集上映として香港の陳可辛(ピーター・チャン)監督、アジアで幅広く活動する女優の杉野希妃、中国ドキュメンタリー作家の王兵(ワン・ビン)監督らを取り上げる。さらに、世界の都市に焦点をあてた「シティー・オブ・フォーカス」のテーマはイスタンブール。トルコ映画を新旧取り混ぜて上映する。

 7月20日まで。映画祭の詳細は公式サイトで。

http://www.taipeiff.org.tw/

(文・写真 遠海安) 
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2013年06月03日

「夢の向こう側 ROAD LESS TRAVELED」 ヴァネス・ウーら舞台あいさつ サモ・ハンとの共演「素晴らしい体験に」

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 バンドの成功を夢見る若者4人を描いた台湾映画「夢の向こう側 ROAD LESS TRAVELED」主演のヴァネス・ウー、ジミー・ハン、ディーン・フジオカ、エリック・トゥーが公開初日の6月1日、東京都内で舞台あいさつした。

 スターを夢見て米国から台湾へ来た青年が、仲間に出会ってバンドを組み、夢をかなえる過程を描く青春映画。出演は大ヒットドラマ「流星花園 花より男子」(01)のヴァネス、香港の大スター・サモ・ハンの次男ジミー、台湾や香港などアジア各地で活躍する日本人俳優ディーンら多彩な顔ぶれ。ヴァネスが設立した製作会社の第1作で、サモ・ハン自身もエグゼクティブ・プロデューサーとして参加。自ら出演もした豪華作品になっている。

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 この日は熱心なファンが多く駆けつけ、4人は大きな拍手と歓声に迎えられて登場。「一生懸命作った映画。楽しんで観てほしい」(ヴァネス)、「台湾の兄弟たちと一緒に日本に戻れてうれしい」(ディーン)、「日本での上映に心から感謝している。たくさんの皆さんにありがとうと言いたい」(ジミー)と、それぞれ興奮気味に喜びを口にした。

 劇中の表情そのままに、和気あいあいと仲の良い4人。撮影もリラックスした雰囲気で進んだそうだが、現場にサモ・ハンが来る日にはさすがに空気が引き締まったとか。「いつものように撮影に行ったら、誰も話していない。『静かだな』と振り向いたら、後ろに父が立っていた」とジミー。今回はアクション監督も兼務したため、“大先輩”の父との仕事は緊張の連続だった様子。「自分は現場で指揮する立場なのに、なかなか意見が言えなかった。親に指示するなんて、皆さんも経験ないでしょう? 緊張したけれど『アドバイスして』とお願いし、相談しながら作り、最後は楽しめた」と振り返った。

 他のメンバーもサモ・ハンとの共演は印象深かったよう。エリックは「幼い頃から見ていた人。共演できて夢がかなった」、ディーンは「生きる伝説のような人。現場の空気も引き締まり、素晴らしい体験になった」と絶賛していた。

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 また、台湾映画「ハーバー・クライシス 湾岸危機 Black&White Episode1」(12)など、アジア地域で幅広く活躍中のディーン。主演作を引っさげての“凱旋帰国”に「鼻血が出るぐらい興奮している」と笑顔。4人のやり取りは冗談が絶えず、終始和やかな舞台あいさつとなった。

(文・写真 岩渕弘美) 

「夢の向こう側 ROAD LESS TRAVELED」(2011年、台湾)

監督:セブン・リー
出演:ヴァネス・ウー、ジミー・ハン、ディーン・フジオカ、エリック・トゥー、クリス・ルン

2013年6月1日、ユーロスペースほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.yumeno-mukougawa.com/

写真:初日舞台あいさつした(左から)エリック・トゥー、ヴァネス・ウー、ジミー・ハン、ディーン・フジオカ

作品写真:(C)Smash and Grab Productions
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2013年05月25日

「GF*BF(原題:女朋友。男朋友)」 ヤン・ヤーチェ監督に聞く 台湾激動の30年 男女3人の愛と葛藤、性差を超えた寛容 「自由を求め、本当の愛を手に入れる。“愛の自由化”が根底に流れるテーマ」

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 レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)など性的マイノリティーに焦点をあてた第4回アジアンクィア映画祭が5月24日、東京・シネマート六本木で開幕した。24〜26日と31日〜6月2日の計6日間、長短編計27作品を上映する。韓国イ=ソン・ヒイル監督の最新作「あの夏、突然に」など3部作を一挙上映するほか、タイのトランスジェンダー(出生時と違う性で生きようとする人)の恋を描いた「愛なんていらない」など幅広いラインナップとなっている。

第4回アジアンクィア映画祭 前売り早々に完売

 中でも注目は台湾・楊雅[吉吉](ヤン・ヤーチェ)監督の「GF*BF(原題:女朋友。男朋友)」だ。男女3人の30年にわたる愛と葛藤を、学生運動や民主化など台湾社会の変化とともに描く。主演の桂綸[金美](グイ・ルンメイ)は今年、台湾最高の映画賞・台湾金馬奨で最優秀主演女優賞を獲得。日本では大阪アジアン映画祭(3月)で初上映されて反響を呼び、今回も前売り券が早々に完売した。

 ヤン監督は71年生まれ。子供たちを主人公にしたファンタジー「Orzボーイズ!」(08)で長編デビューした。「セデック・バレ」(11)の魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督と同世代で、台湾映画界の中核を担う作り手の1人。大阪アジアン映画祭で来日したヤン監督に話を聞いた。

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「友人たちが語り始めた秘密。ほこらに向かって話すように」

 30年。長い長い物語は、友人の問わず語りから始まった。

 「学生時代、僕は友達と距離を置くタイプだった。ところが30歳を過ぎたころ、彼らが急に秘密を話してくれるようになった。まるで木のほこらに向かって話すようにね。僕にはどう慰めていいか分からなかった。『理解できる。分かるよ』とだけ言ったんだ」

 1985年、台湾南部・高雄。メイベル(グイ・ルンメイ)、ライアム(ジョセフ・チャン=張孝全)、アーロン(リディアン・ボーン=鳳小岳)は同じ高校に通っている。メイベルはライアムに、アーロンはメイベルに恋していた。思いが届かず悩むメイベルは、アーロンの願いを受け入れ交際を始める。しかしある時気付いてしまう。自分を拒んだライアムの視線が、ずっとアーロンを追っていることを。

 高校から大学へ進み、社会に出る中で、3人は苦しい関係を続けていく。別の女性と結婚したアーロンと、愛人関係を続けるメイベル。妻子ある男の恋人と別れられないライアム。「僕のつらさを分かってくれるのは、世界でお前だけだ」。違う相手に同じ言葉でしばられる2人。出口が見えぬ中、メイベルは一人ひそかにある決断をする。それは傷付いた自分たちを包み、許し、解放する愛だった──。

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主演のグイ・ルンメイとジョセフ・チャン 「俳優になる前から知っている」

 胸の奥がひりひり痛むような物語で、10代から40代までを演じきった主演の3人。ヤン監督はグイ・ルンメイ、ジョセフ・チャンの成長を、10年以上にわたって見つめてきた。出会いは青春映画の傑作「藍色夏恋」(02)。当時ヤン監督は助監督で、オーディションに参加した2人はまだ高校生だった。

 「俳優になる前の彼らも、素顔も知っている。今回もきっとやれると自信があった。キャスティングで改めて2人に会った時、彼らの目の中に高校時代の姿が見えた。俳優には『自分を感動させてくれ』とだけ言うんだ。偽物の涙にはまったく心が動かない。スクリーンの中の彼らの演技や感情が、本物であることだけを望んだ」

 3人は台湾社会の激動の中で成長する。90年代前半、民主化を求める学生運動が拡大。台北中心部・中正紀念堂の広場に学生たちが座り込む。さらに90年代後半には、ゲイカップルが華やかな結婚パーティーを開く。

 「盛り込んだエピソードは、ほとんど現実に起きたこと。僕は高校、大学を学生運動とともに過ごした。ゲイカップルの結婚式も実際の話。台湾で同性婚はまだ法的に認められていないが、家庭を持ち、子供を育てるカップルは増えている。同性愛者が認められることは、愛が自由化されたことと同じ。自由を求め、本当の愛を手に入れる。それが作品の根底に流れるテーマだ」

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学生運動から民主化へ 激動の30年「台湾人には反抗心がある」

 一方でヤン監督は、日本以上に急速に社会変化が進む台湾に「無常感が広がっている」とも感じている。民主化も実現し、経済成長も続き、生活レベルは向上した。しかし、人々の間に沈んだ空気が広がっているという。

 「日本の人たちも過去に経験したのではないか。学生運動を経て、社会は変わったけれど、人々は『こんなはずではなかった』と思う。頑張ったけれど、どこかむなしい。追ってきた夢が変わってしまったのだ、と」

 それでもヤン監督は「異議を唱える」ことをやめない。台北近郊で建設が予定され、トラブル続きで完成が遅れている「第4原発」。計画中止を求める活動に、俳優や監督ら多くの映画関係者とともに参加。毎週末にデモを行い「政府が原発をやめるまで続ける」と言葉に力を込める。

 「もう政治にはだまされない。皆が気概を持つようになった。台湾人の心には、反抗心が備わっている。台湾は移民社会だ。清朝に反して大陸から逃れた人々、国共内戦後に大陸から来た国民党の人々もいる。もともとお上に従うのが嫌いで、あまり従順ではないんだ」

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好きな作家は向田邦子 感動は「ポケットに入れて」温める

 厳しい言葉を並べるヤン監督だが、「GF*BF」を支えるのは大きく深く、温かい寛容の精神。丁寧な語り口には小説を読むような味わいもある。事実「映画を見るより読書が好き」だそうで、好きな作家に挙げるのは向田邦子。5年前、デビュー作「Orzボーイズ!」(08)のインタビューでも語っていた。

 「日本の小説をよく読む。向田邦子はとても好きで、台湾で翻訳本が出るたびに読んだ。日本の小説の雰囲気は、中国や台湾とまったく違う。言葉は劇的でも、激しくもない。日本人は観察力が鋭く、注意深く、ささやかなものに目を止める。物の見方、考え方も独特で、いつも驚かされる。僕は感動したり、心が動いた経験を、すぐには表に出さない。しばらくポケットに入れておいて、ある時に取り出して表現するんだ」

 これまで30年、監督自身が見てきた台湾社会の変化。作品の種となった友人の問わず語り。ひそやかなささやきはポケットに入れられ、時間をかけて熟成された。「GF*BF」で最後にメイベルは、一人きりの決断を下す。台湾での公開時、グイ・ルンメイは「定義できない大きな愛」と表現し、感極まって涙をこぼした。

 長い葛藤を経た3人の愛。ゆっくりと温かく、観る者を包むだろう。

(文・写真 遠海安)

「GF*BF(原題:女朋友。男朋友)」(2012年、台湾)

監督:楊雅[吉吉](ヤン・ヤーチェ)
出演:桂綸[金美](グイ・ルンメイ)、張孝全(ジョセフ・チャン)、鳳小岳(リディアン・ボーン)、張書豪(チャン・シューハオ)

第4回アジアンクィア映画祭で5月25日、6月2日に上映。当日券あり。作品の詳細、映画祭の上映スケジュールは公式サイトまで。

http://aqff.jp/2013/index.php

作品写真:(c)2012 ATOM CINEMA CO., LTD. OCEAN DEEP FILMS CENTRAL MOTION PICTURE CORPORATION HUAYI BROTHERS INTERNATIONAL MEDIA LTD
ALL RIGHTS RESERVED
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2013年04月22日

コラム「アジア電影放浪録」スタート 台湾のスーパーバンド・五月天(Mayday)、flumpoolと初共演 言葉の壁越え一つに

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 映画の森ではこのたび、コラム「アジア電影放浪録」をスタートします。「電影」は中国語で「映画」を意味します。映画だけでなく、音楽や舞台など広くアジアの文化を取り上げる予定です。

 筆者は遠海安。これまでに中国、香港、台湾、マレーシア、インドネシアに通算約7年在住。映画や音楽を追って各地を放浪した軌跡を、独断(!)と愛情と期待を込めてお伝えします。

 第1回は台湾のロックバンド「五月天(Mayday、メイデイ)」。東京・NHKホールで4月17日、環境保全を訴えるコンサート「EARTH×HEART(アース・バイ・ハート)2013」が行われ、日本の人気バンド・flumpoolと初共演しました。

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 五月天の人気のすごさを、どう伝えればいいか。

 台湾でも中国でも香港でも、コンサートのチケットは瞬時で完売だ。圧巻だったのは2012年4月末、北京五輪メーン会場“鳥の巣”で行われた2日連続公演。「約20万席が数分で売り切れた」と伝えられた。さらに昨年末の台湾・高雄公演。チケット発売窓口となったコンビニチェーンは、台北中の店舗という店舗に長い列ができた。

 中国の“つぶやき”サイト・微博(ウェイボー)で、ボーカル・阿信(アシン)のフォロワーは1400万人を超えている。阿信がフェイスブックに書き込めば、あっという間に数万件の「いいね!」がつく。中華圏、いや華人の住む世界中にファンを抱えるスーパーバンドなのだ。

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 五月天の何が、それほど人を引き付けるのか。

 デビューは1999年。メンバーは阿信、ギターの怪獣(モンスター)、石頭(ストーン)、ベースの瑪莎(マサ)、ドラムの冠佑(ミン)の5人で、これまでにオリジナルアルバム8枚を発表している。

 彼らの魅力はなんといっても、阿信を中心に生まれる楽曲の良さだろう。メンバーは三十代後半に入ったが、ファンの中心はいつも十代、二十代だ。阿信が書く詞は、若さゆえの悩みや葛藤を、分かりやすい言葉ですくい上げる。ツアー名が象徴している。07年の「離開地球表面 Jump! The World(地球を離れる)」、09年の「DNA創造(遺伝子を作り出す)」。鬱屈する若者たちは思うのかもしれない。「ここを離れてどこかへ行きたい。自分の道は自分で決めたい。この苦しみを、五月天は分かってくれる」と。

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 そんな五月天にとって、日本は近くて遠い場所だった。

 日本との縁は深い。レコーディングでメンバーは繰り返し来日し、阿信は日本旅行の思い出をまとめた書籍も出版している。日本の人気バンド、GLAYとは10年来の交流がある。しかし、中華圏ではスタジアムを連日満員にする五月天も、日本ではなかなか知名度が上がらなかった。06年以降は単独公演も行うが、ライブハウス規模の会場が続いていた。

 今回の「EARTH×HEART」参加は、階段を一歩上がるきっかけになっただろう。言葉の壁を破るため、二つのバンドはともに強い意志を見せた。flumpoolは3月、初の台北単独公演を成功。メンバーは壇上から流暢な中国語で語りかけ、詰めかけた台湾のファンを喜ばせた。初共演を前に五月天はflumpoolの「証(あかし)」を中国語で、flumpoolは五月天の「OAOA」を日本語でカバー。会場のスクリーンには、五月天の歌詞が日本語、flumpoolの歌詞が中国語で映し出された。

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 満席となったNHKホールは、日本語と中国語の声援が飛び交い、熱気に満ちていた。阿信は日本語で「緊張している」と、いつも以上に真剣な表情。flumpoolのボーカル・山村隆太は、阿信に中国語で一生懸命話しかけ、場をなごませる。最後は全員が中国語と日本語で「証」と「OAOA」。五月天、flumpoolのファンとも総立ちで声を合わせた。
 
 五月天を長く応援してきた日本のファンの一人は、ライブの後に涙ぐんだ。「阿信の歌を日本語で聴けるなんて」。音楽は国境を越える。実は簡単なようで難しい道のりかもしれない。しかしこの日は会場の誰もが、確かな手ごたえを感じただろう。

(文・遠海安)

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「EARTH×HEART 2013」のライブの模様は、4月22日(月)19:00〜21:00、TOKYO FMほかJFN全国38局のほか、台湾UFOなど海外FM局でも放送される。

「EARTH×HEART 2013」公式サイト

http://www.tfm.co.jp/ehl2013/index.html
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