
仏コメディー映画「真夜中のパリでヒャッハー!」(15)のニコラ・ブナム監督が、夏休みのドライブ旅行で一家が繰り広げる騒動を描いた「ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走」。
物語はシンプルだ。愛車でバカンスに旅立つ整形外科医の父トム(ジョゼ・ガルシア)と臨月の母ジュリア(カロリーヌ・ヴィニョ)、祖父ベン(アンドレ・デュソリエ)と子供2人の5人家族。車の電子制御システムが壊れ、ブレーキが利かないまま、速度160キロで高速道路を大暴走。次々と降りかかるハプニングを喜劇仕立てで描いていく。

大暴走といえば、日本のパニック映画「新幹線大爆破」(75)。速度80キロ以下になると爆発する爆弾が仕掛けられた新幹線。警察と国鉄、犯人グループの駆け引きがスリル満点に描かれた傑作だ。この映画に影響を受けて作られたのがキアヌ・リーブス主演「スピード」(94)。バスに仕掛けられた爆弾をめぐり、警察と犯人の攻防戦が描かれた。
今回暴走を引き起こすのは、車に登載された最新型電子制御システム。ドライバーなら誰にもが起こり得るトラブルだけに感情移入しやすい。凄いのは実際の高速道路に俳優を乗せた車を走らせ、車内で俳優が演技し、アクションもこなす点だ。コンピューター・グラフィックス(CG)合成全盛の昨今、コメディーだからと手を抜かず、疾走感と説得力を持たせた。

家族が乗った車が暴走して物語が動き出し、警官や車のディーラーらを巻き込む「巻き込まれ型コメディー」。予想の一歩先を行く笑いとアイデアが、92分とコンパクトにまとめられている。クライマックスは奇想天外なアクション。笑いを超えて感動を呼ぶ。スケールの大きさ、センスの良さに脱帽だ。
(文・藤枝正稔)
「ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走」(2016年、フランス)
監督:ニコラ・ブナム
出演:ジョゼ・ガルシア、アンドレ・デュソリエ、カロリーヌ・ビニョ、ジョゼフィーヌ・キャリーズ、スティラノ・リカイエ
2017年7月22日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://gaga.ne.jp/bon-voyage/
作品写真:(C)(C)2016 Chic Films – La Petite Reine Production – M6 Films – Wild Bunch
タグ:レビュー