2013年12月17日

「フォンターナ広場 イタリアの陰謀」 公開初日に識者トーク 国家の情報隠ぺいに焦点

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 イタリア史上最大の未解決事件を描く「フォンターナ広場 イタリアの陰謀」公開初日の12月21日、東京都内で識者のトークショーが開催される。

 1969年、ミラノ。学生運動が高まる中、フォンターナ広場で銀行爆破事件が起きる。死者17人、負傷者88人を出す大惨事となったが、真相は解明されぬまま事件は迷宮入り。その後「国益を優先した国家が、事実を隠ぺいした」とも指摘された。

 トークショーには新右翼「一水会」顧問の鈴木邦男氏、映画監督・作家の森達也氏、朝日新聞社記者の諸永裕司氏が参加する。日本の未解決事件「下山事件」や「松川事件」などと比較。日本で「特定秘密保護法案」が強行採決されたことを受け、国家による情報隠ぺいと市民生活への影響などを話し合う。

 トークショーはシネマート新宿で12月21日、第2回(午後12時55分から)上映後、午後3時15分から30分間の予定。公開初日から2日間、来場者プレゼント(数量限定)も。21日はバリラジャパン(Barilla Japan)のリングイネ「バベッティ(500グラム)」、22日はサンペレグリノ (S.Pellegrino)のミネラルウォーター(250ミリリットル)。

「フォンターナ広場 イタリアの陰謀」(2012年、伊・仏)

監督:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ
出演:ヴァレリオ・マスタンドレア、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ミケーラ・チェスコン、ラウラ・キアッティ、ファブリツィオ・ジフーニ、ルイージ・ロ・カーショ

2013年12月21日、シネマート新宿ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://moviola.jp/fontana/

作品写真:(c)2012 Cattleya S.r.l. – Babe Films S.A.S
タグ:告知
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2013年12月10日

「鑑定士と顔のない依頼人」 謎に導かれ物語の迷宮へ 種明かし鮮やかに トルナトーレ、円熟の演出術

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 大ヒット作「ニュー・シネマ・パラダイス」(89)のジュゼッペ・トルナトーレ監督。最新作「鑑定士と顔のない依頼人」は、周到に練られたミステリーだ。主演は「英国王のスピーチ」(10)のジェフリー・ラッシュ、音楽は「ニュー・シネマ・パラダイス」と同じエンニオ・モリコーネが担当した。

 初老の美術品鑑定士ヴァージル(ジェフリー・ラッシュ)は、どんな贋作も一瞬で見抜く腕を持つ。オークションを仕切る美術界のカリスマだ。その一方、裏で相棒のビリー(ドナルド・サザーランド)と組み、出された美術品を安値に設定。自ら落札する悪質な収集家でもあった。

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 ヴァージルはプライドが高く、人付き合いが苦手で、独身を貫いている。行きつけのレストランに自分専用の食器を用意。毎晩一人きりでディナーを楽しんでいた。潔癖症で常に手袋をはめ、自宅はホテルのように生活感がない。家には最新の防犯設備に守られた隠し部屋があり、おびただしい数の女性の肖像画が壁を埋め尽くしていた。ヴァージルの日課は女性たちの前に座り、その姿を眺めることだった。

 そこに若い女性から一本の電話が入る。「両親が残した美術品を査定してほしい」。依頼人はクレア(シルビア・ホークス)。ところがなぜか彼女はヴァージルの前に現れない。廃墟のような屋敷の隠し部屋から、声だけで指示を出す。“広場恐怖症”という奇妙な病を患い、人前に姿を見せない不思議な女性だった──。

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 「ニュー・シネマ・パラダイス」のようにノスタルジックな作品を得意とする一方、「題名のない子守唄」(06)のようなミステリーにも手腕を発揮するトルナトーレ。今回は恋を知らない初老の偏屈男と、娘ほど年の離れた引きこもり女性の恋愛だ。

 ヴァージルは言う。「贋作には作者のしるしが隠れている」と。その言葉通り、ストーリーには人をだます仕掛けと伏線が幾重にも張りめぐらされている。染められた髪の毛、隠し部屋、屋敷にあった歯車、画家の道を断たれた男、何でも記憶するカフェの女、謎に満ちた依頼人。複雑に絡み合う謎、伏線、違和感はすべてラストに集約され、鮮やかに種が明かされる。

 トルナトーレ監督の演出は、円熟味を増している。緊張感を維持しながら、饒舌な語り口で観客を虜にする。冒頭とラストで別人のように異なるジェフリー・ラッシュ。変幻自在な演技により、見ごたえあるミステリーに仕上がった。

(文・藤枝正稔)

「鑑定士と顔のない依頼人」(2013年、イタリア)

監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、シルビア・ホークス、ドナルド・サザーランド

2013年12月13日、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://kanteishi.gaga.ne.jp/

作品写真:(c)2012 Paco Cinematografica srl.

タグ:レビュー
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2013年10月25日

「鑑定士と顔のない依頼人」 第26回東京国際映画祭 ジュゼッペ・トルナトーレ監督舞台あいさつ 緻密な本格ミステリー 「偽りの中にも真実がある」

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 第26回東京国際映画祭特別招待作品「鑑定士と顔のない依頼人」のジュゼッペ・トルナトーレ監督が10月22日、上映に合わせて東京・六本木で舞台あいさつし、作品のテーマについて「偽りの中にも真実がある」と語った。

 名画の真贋を見分ける鑑定士(ジェフリー・ラッシュ)を主人公に、さまざまな謎が散りばめられたミステリー。孤高の天才的鑑定士にラッシュを起用した理由について、監督は「脚本を書く段階では候補が2人いた。完成後に『ジェフリーしかいない』と思い、すぐ脚本を送った。1週間で『ぜひ出演したい』と返事を受けた。非常に簡単でうれしい出会いだった」と振り返った。

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 また、ラッシュの俳優としての魅力を「何事にも挑戦し、勇気もある。役柄に飛び込んでいくタイプ。厳しい反面、遊び心もあり、楽しみながら演じられる人。何より俳優として自分の仕事を愛している。一緒に仕事をするのは本当に楽しく、最高の経験だった」と語った。

 綿密に練られた脚本、緻密に張られた伏線で、上質の推理小説のような味わいがある同作。作品のテーマを「偽りの中にも真実がある。日本の皆さんは素晴らしい才覚をお持ちなので、(作品のポイントは)きっとお見通しでしょう」と話し、満場の客席から拍手を浴びていた。

(文・遠海安)

「鑑定士と顔のない依頼人」(2013年、イタリア)

監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、シルビア・ホークス、ドナルド・サザーランド

2013年12月13日、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://kanteishi.gaga.ne.jp/

作品写真:(c)2012 Paco Cinematografica srl.

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2013年10月05日

「鑑定士と顔のない依頼人」 トルナトーレ監督、東京国際映画祭で来日へ

 12月公開のイタリア映画「鑑定士と顔のない依頼人」のジュゼッペ・トルナトーレ監督が、第26回東京国際映画祭に合わせて来日する。

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2013年08月07日

「ニーナ ローマの夏休み」 白く乾いた静かな街 光と音、幻想のひと夏

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 8月のローマ。人々はバカンスに出かけ、街はがらんと静まり返っている。20代のニーナは音楽教師。中国への留学を控え、試験勉強で街に残っていた。学期末の音楽会が終わり、生徒たちにも別れを告げた。秋には新生活が始まる。

 「両親が留守の間、犬の面倒をみてくれないか」。親友の頼みを受け、ニーナは郊外の家に滞在することになる。近代的に整備された新都心。白い建物が続く通りは、人影もまばら。すべてが止まり、砂漠のように乾いた街で、ニーナのひと夏が始まる。

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 ひとり街を漂うニーナの前に、さまざまな人が現れる。ナポリ生まれのデ・ルーカ教授。風変わりな子供の管理人エットレ。犬のオメロ。歌のレッスンをしている少女マルタ。気になる男性チェリストのファブリツィオ。太陽が照りつける夏の街。ニーナと彼らの出会いは、ある時は幻想のように、ある時は夢のように浮かんでは消える。

 ニーナは徐々に気付いていく。漠然とした将来への不安。恋愛への望み。社会と人々とのつながり。太陽の白い光。こだまするチェロの響き。夏と街は、彼女に新たな世界を見せる──。

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 「ニーナ ローマの夏休み」は、街と少女を写真のように切り取り、独自の美意識で再構成する。ボーイッシュなニーナの短髪、シンプルでカラフルな衣装。舞台は近代的でどこか無機質な、郊外の新都心。直線的で色のない建物がカンバスになり、ニーナのひと夏がカラフルなロードムービーのように描かれる。

 メガホンを取ったのは、イタリアの新鋭女性監督エリザ・フクサス。父で著名建築家のマッシミリアーノ・フクサスの影響か、都市建築への愛着が画面を通して伝わってくる。そのせいか、人物の心情描写が弱い感は否めない。監督も「美を追求した作品。美しいものを見たい気持ちは麻薬のよう。物語に勝ってしまうこともある」と認める。

 乾いた静かなローマの夏。監督の美意識に導かれ、しばし空想を疑似体験するのもいいだろう。

(文・遠海安)

「ニーナ ローマの夏休み」(2012年、イタリア)

監督:エリザ・フクサス
出演:ディアーヌ・フレーリ、ルカ・マリネッリ、エルネスト・マイエ、ルイジ・カターニ、マリーナ・ロッコ

2013年8月10日、新宿シネマカリテほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://uplink.co.jp/nina/
タグ:レビュー
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