
「ガラスの飼育」「血の婚礼」「カルメン」などで知られるスペインのカルロス・サウラ監督と、「暗殺の森」「地獄の黙示録」「ラストエンペラー」で“光の魔術師”と賞されたイタリアの撮影監督ヴィトリオ・ストラーロ。二人が初めて組んだ「フラメンコ」(95)は日本でもヒットし、フラメンコ熱が一気に加速した。二人はその後も「タンゴ」「ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い」など、ダンスと音楽をテーマにした作品を撮り続けた。さらに踊りの真髄に迫った作品が「フラメンコ・フラメンコ」だ。
フラメンコは歌(カンテ)、踊り(バイレ)、ギター(フラメンコギター)伴奏が主体となった、スペインのアンダルシア地方に伝わる民族芸術。情熱的でダイナミックな世界は人々を魅了してやまない。「フラメンコ・フラメンコ」は、「生命の旅と光」をテーマに、人の誕生から晩年、そして復活を、多彩なパロ(曲種)を用い全21幕で描き出す。

サウラ監督によると、生命の旅は“音楽に乗って人間の一生を巡る”ことという。誕生の「アンダルシアの素朴な子守唄」から始まり、幼少期の「アンダルシア、パキスタンの音楽とそれが融合した音楽」、思春期の「より成熟したパロ」、成人期の「重厚なカンテ」、死期の「奥深く、純粋で清浄な感情」。そして希望ある再生につなげ、命のよみがえりに期待を抱かせる。
スタジオに作られたスペースをステージに見立て、各楽曲を一幕として21曲を使用。曲に合わせた背景や絵画が用意され、光と影を徹底的にコントロール。ストラーロは陰影の強い濃厚な絵を作り出し、画面に命を吹き込む。


フラメンコ界の“神”と称されるマエストロたちと、新世代の豪華アーティストの競演が繰り広げられる。フラメンコ好きには夢のようだろう。クライマックスは79年、ジョン・マクラフリン、ラリー・コリエルと“スーパー・ギター・トリオ”を組み人気を得たフラメンコ・ギターの名手、パコ・デ・ルシアが登場。重厚な演奏を披露する。本国スペインに次ぎ、世界2位のフラメンコ人口を抱える日本。多くのファンを魅了するに違いない。
(文・藤枝正稔)
「フラメンコ・フラメンコ(2010年、スペイン)
監督:カルロス・サウラ
出演:サラ・バラス、パコ・デ・ルシア、マノロ・サンルーカル、ホセ・メルセー、ミゲル・ポベダ、エストージャ・モレンテ、イスラエル・ガルバン、エバ・ジェルバブエナ、ファルキート、ニーニャ・パストーリ
2月11日、渋谷Bunkamuraル・シネマほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://www.flamenco-flamenco.com/